京都大原リクルートブログ

2018/04/02

認知症の介護、こんなところに注目しよう

介護職

こんにちは!京都大原記念病院です。

平均寿命が延びるにつれて、認知症患者の数も増えてきています。
65歳以上の高齢者のうち認知症患者は2012年時点で462万人、2025年には約700万人になるだろうと言われており、700万人を高齢者の総数で考えると5人に1人の方が認知症を有することになるとも考えられています。

認知症患者が増えるということは、患者に関わる介護者も増えるということ。
今回は認知症の介護を行う上で考えるべき点についてお話します。

 

認知症とは?

認知症とは、何らかの病気を原因として神経細胞が壊れたために起こる症状や状態の相称です。
正常な老化から起こるものとは全く別物です。
放置すると症状は進行し、悪化すると社会生活や日常生活に支障が出てしまうこともあります。
認知症はその原因となる病気などからいくつかの種類に分けられます。
その中でも「3大認知症」と言われる下記の3つで全体の85%を占めています。

 

アルツハイマー型認知症

正式名称は「アルツハイマー病による認知症(DSM-5)」または「アルツハイマー病による軽度認知障害(DSM-5)」といいます。
認知症の中でも一番多いとされ、男性より女性が発症しやすいのが特徴です。

 

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、認知症の20%を占める病気です。
アルツハイマー型認知症が女性に多いのに比べ、レビー小体型認知症は男性の方が発症しやすいのが特徴です。

 

血管性認知症

血管性認知症は脳梗塞や脳出血が原因となり発症します。
認知症による症状が急激に出現し、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら進行するのが特徴で、女性より男性の方が発症しやすい傾向があります。

 

認知症によく見られる症状

老化による物忘れとの区別が難しい場合もありますが、認知症を発症すると次のような症状が顕著になってきます。

 

物忘れ

記憶力が低下して、つい今の出来事も忘れてしまうことがあります。
同じことを何度も言ったり聞いたり、置き忘れやしまい忘れが増えて探し物が増えます。
「夕食に何を食べたか忘れるのは老化による物忘れ、食べたこと自体を忘れるのが認知症」などともよく言われます。

 

判断力の低下

テレビの内容が理解できなくなったり、話のつじつまが合わなくなったりします。
料理や片付け、運転など普段やり慣れていることでのミスが増えたり物事の段取りがわからなくなったりします。

 

意欲の低下

下着を何日も取り替えず、身だしなみに構わなくなる傾向が見られます。
趣味や好きなテレビ番組などに興味を示さなくなり、何をするのも嫌がるようになります。
その他にも徘徊、暴言、幻覚、幻聴、不安感などの症状もあり、患者によって見られる症状や表れ方、その進行速度は様々です。

 

認知症患者を介護するうえで意識したい基本的なこと

人間としての自尊心を守る

一昔前は「認知症になったらボケてしまってもう何もわからないだろう」など、一部では非人道的な扱いを受ける場合もありました。

現在では認知症に対する理解も進み、認知症患者も自尊心や安心感を持って生活できるような介護方法や環境整備が進められています。
「もし自分が認知症になったらどのようなケアをして欲しいのか」を考えながら、患者の気持ちに寄り添った介護をするようにしましょう。

 

症状に対する根本原因を考える

認知症が進んで現れる困った症状には必ず理由があります。
「徘徊を防ぐために家にカギをかける」「妄想に対して適当にごまかす」などその場しのぎの対応だけでなく、その根本となる原因を探して解消することにも注力したいものです。

家族の方だけでは難しいかもしれませんが、普段から本人と接している介護スタッフや医師などとも協力して取り組んでみましょう。

 

認知症の症状を進行させないための予防法とは

現在の医学では認知症を完治させることはできません。
しかし介護者の適切な関わり方によっては症状の軽減や進行速度を遅くすることはできます。

記憶障害や判断力低下といった症状については脳の活性化を促すリハビリなどで進行を遅らせることが期待できます。
最近では、高齢者を対象にした習い事や身体を動かすことを目的としたコミュニティ活動も盛んです。
人と関わったり身体を動かしたりすることは脳の活性化にも繋がるため、このようなコミュニティ活動への参加も認知症の改善に効果的と言えます。

妄想や興奮、不安感など「(周辺)行動・心理症状」と呼ばれる症状については介護者の患者への関わり方や生活環境への配慮で症状を軽減する場合があります。
例えば「できなくなったこと」ばかりに注目して先回りに介護するだけではなく、できることは本人にやってもらい、家庭や社会の中での役割を作ってあげることも大切です。

「やりがい」「自尊心」を持ってイキイキと生活することは精神的な落ち着きにもつながり、認知症の症状の進行速度を和らげることにもつながるでしょう。

 

認知症で介護疲れしないために

認知症の多くは進行を遅らせることはできても、治すことはできません。
いつまで続くのか先の見えない長い介護生活で、介護する側が疲れ果ててしまうこともあります。

認知症の介護年数は平均6~7年と言われ、中には10年以上という方もいます。
認知症の介護は長期戦になる可能性が高いことを想定して準備をすることが必要です。

介護する方は一人で負担を背負い込まないように関係者で少しずつ分担したり、悩みや愚痴を理解して聞いてくれる友人や相談先を作ったりするようにしましょう。
一人で悩まずに地域のコミュニティに参加したり、家族や友人の協力を得て息抜きや休息の時間を確保したりすることも大切です。

「私が最後まで面倒を見なければ」と思い詰めることは良くありません。
自宅での介護が難しい場合は施設への入居も選択肢の一つと言えるでしょう。

 

まとめ

認知症は様々な病気を原因とする脳の神経細胞の障害から起こる症状です。以前は痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念ですが、2004年に厚生労働省の用語検討会によって「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられ、行政分野および高齢者介護分野において「痴呆」の語は廃止されています。

認知症の多くは完治させることはできませんが、適切な介護と生活環境の整備によってその進行を遅らせ、できる限り長い期間穏やかに生活をすることは可能です。
認知症に対する正しい理解と知識を付け、(患者)本人の自尊心を保った介護ケアを行うようにしましょう。

また、介護者も負担や悩みを一人で抱え込むのも良くありません。
家族や友人、相談窓口など悩みを相談できる先を活用し、息抜きや休息の時間を作るようにしましょう。

 

この記事を監修した人

磯部 直文

磯部 直文 (人事部 介護職 採用担当責任者)
京都大原記念病院グループに介護職として入職。介護老人保健施設( 入所/通所リハビリ )で現場職員として約15年間従事。グループの介護職 教育担当者を務めた後、事務職へ転身。人事部 介護職採用担当責任者として、日々、学生対応にあたる。京都市認知症介護指導者。

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