京都大原リクルートブログ

2017/10/05

介護におけるヒヤリハットの原因とは?事故防止に必要なこと

介護職

こんにちは!京都大原記念病院です。

「ヒヤリハット」とは、事故にはならなかったものの事故になっていた可能性のある「ヒヤリ」「ハッ」とした事例のことです。

沢山の利用者が一緒に生活する介護現場では、トラブルや事故のもとが思わぬ場所に潜んでいます。
だからこそ事故防止に努めないといけません。

「ヒヤリハット」を分析し対策を練ることは、事故の予防に効果があるとされています。

今回は介護現場でのヒヤリハットが起こる原因や、事故防止に必要なことについてご紹介します。

 

ヒヤリハットの重要性

アメリカの安全技師であるハインリッヒが発表した「ハインリッヒの法則」では、大きな事故が1件起これば、その背景には小さな事件が29件、ヒヤリハットが300件起きていると言われています。

ヒヤリハットは、たまたま大きな事故につながらなかっただけで、大きな事故の原因と同様のミスや事故未遂であることがほとんどです。
つまり沢山のヒヤリハットの積み重ね(放置)が事故につながっていくのです。

 

ヒヤリハットに気を付けていくことで、介護現場における事故やトラブルは大きく減らすことができるでしょう。

ヒヤリハットが生じたら「大事にならなくて良かった」と安心するのではなく、再び生じないように対策を考えることが重要です。

ヒヤリハットをできる限り多く集めて、スタッフ同士で共有・分析していくことで問題点が浮き上がります。

同じような事例がいくつもあがっているときは、素早い対策が必要です。

 

常々「ヒヤリ」や「ハッ」と気づける感覚を持っていることも、大変重要になります。日々の業務に慣れ過ぎて危険に気づけないと、いつか大きな事故が起きてしまうでしょう。

 

ヒヤリハットが起きる原因

なぜヒヤリハットは起こるのでしょうか?
沢山の事例をあげていくと、介護事故につながる要因にはいくつかのパターンがあることが分かってきます。

次の3つの傾向に分類できますので、それぞれ原因につながるヒントを探っていきましょう。

 

1  ご利用者本人に要因がある

介護を必要とするご利用者は、それぞれに状況が異なり、必要な支援も異なります。

例えば「足が不自由」という方を想定してみましょう。
時間をかければ自力で歩行できる方もいれば杖や車いすを使用している方、基本的に寝たきりの方などがいます。

同様に自分で排泄・食事・洗面をするのが困難な方でも、脳・神経の障害や認知症がある方と体に障害がある方では対処法も変わります。

加えて、現在の健康状態や服薬状況も日々変わります。

 

スタッフはそれらを把握したうえで、その方がどのような状態で何の介助が必要か、また何を注意しないといけないのかを考えないと、本人とスタッフの想いが食い違って事故につながってしまいます。

 

2 支援する側(家族、スタッフ、地域の人など)に要因がある

介護支援を行う人達は、日々の介護支援に加え自分の生活を過ごしていくことになります。

基本的に介護には休みがなく、比較的限られた空間の中で行われるのが一般的です。
そのため日々の介護ストレスや不満は溜まりやすい傾向にあります。

加えて支援する側の私生活などが原因で気持ちに余裕がない時や体調不良の時には、当然集中力の低下などが起こり、事故へつながりやすくなります。

 

3 介護が行われる環境に要因がある

「手すりがない場所で転倒した」「ベッドの高さが合わなくて立ち上がる際に膝をついた」「装具が合わなくて怪我をした」など、環境(福祉装具も含む)に要因があって事故が起こる事例もあります。

ヒヤリハットが起こりやすい場所や状況を介護支援する側が共有し、必要であれば施設や住宅の環境を整えることが求められます。

一度改善されたとしても、ご利用者の心身の状況悪化などがあれば、再び改善が必要になる可能性もあります。

 

事故防止のために必要なこと

介護現場での事故を防ぐためには「現場での課題」をきちんとつかむことが必要です。

日々の業務は忙しくとも、ヒヤリハットに気づける感覚、それを声に出す勇気を養うために「ヒヤリハット検討会」を行うことはとても重要な業務の一つといえます。

※「ヒヤリハット検討会」ではヒヤリハットの事例を報告し、なぜそれが起こったのか、どうすれば防げるのかを話し合います。

小さな事故が起きた場合はもちろんのこと、事故につながりそうだと危険を感じた瞬間、もしくは「どこか変だ」「何かを変えなくてはならない」と気になったことなど、些細なことから重要なことまで、スタッフで共有することが大切です。

ヒヤリハット検討会で役立つのは、日々の気づきがまとめられた「個々のケース記録」や「ヒヤリハット報告書」です。
「現場での課題」はそのケース記録やヒヤリハット報告書の中にありますので、スタッフ間で機会を設けてしっかり検討しましょう。

 

ヒヤリハット検討会を行うにあたって大切なこと

1 .定期的に行う(1か月に1回など)

2 .意見を出しやすいように少人数単位で行う

3 .短時間に集中して行う

4 .ヒヤリハットの原因を分析する

5 .対策について皆でアイデアを出す

6 .検討会の内容を実践し、実践後の経過を見て再検討する

検討会ではあくまで問題の共有・分析が目的です。あら探しやミスを責めるようなことは避けましょう。

 

介護におけるヒヤリハットの事例

介護を行っている際に起こりやすいヒヤリハットの事例です。
もちろんこれ以外にも、日々の生活を行う上で起こりやすいヒヤリハットはたくさんあります。

ぜひ「気づき」を蓄積し、大事故を防いでいきましょう。

 

ヒヤリハット事例1

【内容】浴室内で滑って転倒した

【起こりうる事故】転倒による骨折や頭部のケガなど

【原因】脱衣場と浴室の床の滑りやすさへの配慮が欠けていた

流し忘れたせっけんの泡が床にこぼれていた

【対策】一人で歩ける方でも、浴室内では脇の下に手を添えるなどのサポートを行う

床のせっけんは随時流すように注意、滑り止めマットを敷く

 

ヒヤリハット事例2

【内容】他者と内服薬を間違えた

【起こりうる事故】合わない薬による副作用、最悪の場合死亡の可能性も

【原因】内服管理を一人のスタッフで行っていた

【対策】スタッフ2名でダブルチェックをする

 

ヒヤリハット事例3

【内容】隣の人の食事を食べてしまった

【起こりうる事故】アレルギー反応やカロリーの過剰摂取など

【原因】重度の認知症の方をスタッフの目の届きにくい席に案内していた

【対策】スタッフが近くにいる席にご案内する

 

ヒヤリハット事例4

【内容】入れ歯の裏側に錠剤が残っていた

【起こりうる事故】薬の質が悪化することで薬の過剰反応が起こる

【原因】合わなくなった義歯をそのままにして装着していた

【対策】薬を飲む前に入れ歯を外してもらう

家族に入れ歯の作り直しを依頼する

 

ヒヤリハット事例5

【内容】靴下を履こうとして椅子から転落

【起こりうる事故】転倒による骨折や頭部のケガなど

【原因】椅子に座った姿勢が不安定であった

【対策】靴下の着脱は前に倒れやすいので、座る姿勢を整えてもらう

 

ヒヤリハット事例6

【内容】車いすのフットレスから足が落ちたまま車いすを押してしまった

【起こりうる事故】足の巻き込みによる骨折など

【原因】足元の確認ができていなかった

【対策】車いすのフットレスから足が落ちないようにカバーをつける

片麻痺で重度の感覚障害がある場合、スタッフが足元を確認する

 

まとめ

・「ヒヤリハット」とは事故につながっていた可能性のある事例のこと

・大きな事故が1件起これば、その背景には小さな事件が29件、ヒヤリハットが300件起きているという「1:29:300」の「ハインリッヒの法則」がある

・ヒヤリハットの起こる原因はご利用者本人、支援する側、介護を行う環境に分類される

・ヒヤリハット検討会を行うことは、ヒヤリハットに気づける感覚を養って事故防止につなげるために重要な業務の1つといえる

 

この記事を監修した人

磯部 直文

磯部 直文 (人事部 介護職 採用担当責任者)
京都大原記念病院グループに介護職として入職。介護老人保健施設( 入所/通所リハビリ )で現場職員として約15年間従事。グループの介護職 教育担当者を務めた後、事務職へ転身。人事部 介護職採用担当責任者として、日々、学生対応にあたる。京都市認知症介護指導者。

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