京都大原リクルートブログ

2017/12/05

看護師に必要なアセスメントのポイントやコツとは

看護

こんにちは!京都大原記念病院です。

看護過程におけるプロセスの一つである「アセスメント」に悩んだことはありませんか?
アセスメントの分析方法やカルテなどへの記録方法は、特に新人看護師に多い壁ではないでしょうか。
頭ではわかっていても「この症状はどう解釈するの?記録はどこまでのレベルで書けばいいの?」と不安に思うものです。

「経験が浅く自分の判断に自信がない…」と悩んでいる新人看護師や、看護経験があっても「自分のアセスメントよりもっと良い判断ができるのではないか」という疑問を抱いたことがある看護師も多くいます。

アセスメントは経験値ではありません。
今回は看護におけるアセスメントのポイントやコツをご紹介します。

 

 

看護の現場で使われる「アセスメント」とは?

「アセスメント」についてお話する前に看護過程について確認しましょう。
一般的に患者様へ看護を行うときには、次の5つの「看護過程」を繰り返します。

1)看護アセスメント:情報の収集を行い、それらの分析をする
2)看護診断:アセスメントで得られた情報や分析内容を元に、問題の要因を特定する
3)看護計画:問題解決までの目標を設定し、実施計画を策定する
4)看護介入(看護実施):策定した計画に基づき看護ケアを実施する
5)看護評価:実施した看護ケアからどのような結果を得られたか評価する、評価内容によっては看護内容の見直しを行う

1)のアセスメントも2)の看護診断も分析を行う過程ですが、1)は患者様やご家族からの訴え、体温や検査結果を分析し、現時点における患者様の全体像を把握するのが目的であるのに対し、2)は患者様の全体像や主訴(申告する症状のうち主要なもの)と、実際に数値や検査結果として出ている客観的データを中心に分析を行い、看護計画を立てるための細かな診断を行う、という点で違いがあります。

「アセスメント」とは「評価・査定」という意味合いを持っています。
看護チームの方針によっては、アセスメントと看護診断を関連付けて行うこともあり、5つに明確化されているわけでないことで、新人看護師がアセスメントを取ることが難しいと感じる要因の一つのようです。

患者様に関する情報には、
主観的情報(本人が痛みや違和感を訴えている、など)
客観的情報(バイタルサインや検査結果といった数値化・視覚化できる情報)
の2つがあります。

それらの情報を分析し、解決すべき課題を把握・客観的に評価することが、合併症や感染症などの初期症状を発見し、症状の進行を防ぐことにつながります。

また、症状を早期に対応できることで、患者様の心身の負担を軽減することも可能になります。

看護計画を立てるための重要なポイントとなるので、患者様をしっかりと観察し、その結果を他のスタッフにもわかるように残すことが大切です。

 

 

アセスメントを適切に行うためのポイント

看護記録において必要な分析手法の一つである「SOAP(ソープ)」。

S (Subject) 主観的情報 患者様の話や訴え、病歴、自覚症状などを記述する。
O (Object) 客観的情報 医師や看護師など医療関係者が身体診察・検査から得られた情報などを記述する。
A (Assessment) アセスメント 上記、SとOの情報をもとに分析・結合、判断・評価し、意見・印象などを記述する。
P (Plan) プラン(計画) 上記、S、O、Aの情報をもとにした治療方針や問題解決のための計画を記述。

 

アセスメントは、この「S・O・A・P」の4項目の中で重要な「評価」の部分です。

看護師は患者様やそのご家族からの主観的情報や、バイタルサインなど根拠となる客観的情報を記録します。

これらの記録には以下の看護理論を枠組みにすると、記述のコツが見えてくるはずです。

ヘンダーソン:14の基本的欲求
ゴードン:11の機能的健康パターン
マズロー:5つの人間のニードの階層構造(欲求5段階説)
ロイ:4つの適応形式
NANDA-l:13領域による分類

 

 

実践をふまえたアセスメントのコツ

実践をふまえたアセスメントのコツについて見てみましょう。

 

<アセスメントを書くコツ>

アセスメントを書くコツは次の3つです。
1.現状を判断する
2.原因を特定する
3.今後について予測をする
例えば、睡眠不足でふらふらの患者様がいらっしゃるとします。

(現状) ・最近眠れていないと訴えている
・倦怠感があり、日中はベッドで臥床(がしょう)していることが多い
・歩行する際にふらつきがある
(原因) ・睡眠不足に伴う筋力低下でふらつきがある
(予測) ・不眠が続いているため、転倒に注意が必要だと思われる

 

これらの情報をSOAPにあてはめてみると次のようになります。

【S】 「最近あまり眠れていない。疲れやすい。眠りが浅い」
【O】 倦怠感があり、日中はベッドで臥床していることが多い。歩行する際、ふらつきがある様子
【A】 睡眠不足による倦怠感があり、日中はベッドで臥床していることが多い。現在のところ歩行する際に筋力低下によるふらつきが見られる。不眠が続いているため、転倒に注意が必要だと思われる。
【P】 医師へ報告、指示を仰ぐ。歩行の際に介助を行う

 

アセスメントは「問題を解決する考え方(論理的思考)」が必要です。

上記の例で言えば、「A(アセスメント):不眠が続いているため、転倒に注意が必要」という内容から「P(プラン):走行の際に介助を行う」という計画になります。

現状と原因がはっきりとしていれば予測ができるようになり、看護計画の立案もしやすくなるでしょう。

 

<アセスメントについて学ぶ、確認してもらう>

先輩看護師から、患者様の症状についてどのようにアセスメントし、どうやって対応したのか聞くこともスキルアップに繋がります。
また、自分の書いたアセスメントを他の看護師に見てもらってアドバイスをもらうこともいいでしょう。

アセスメントは、どうしても自分の考え方のクセが出てきます。
他の看護師に意見を求めると、違う角度から問題点を見つけることが出来るかもしれません。

 

<情報収集>

アセスメントを適切に行うために必要な情報収集ですが、実はその情報収集で欠かせないことがあります。
それは「異常を見つけること」ばかりに注意せず、「異常がわかるよう、その患者様にとっての正常な状態を把握する」ことです。

できるだけ患者様の正常な数値や状態も把握し、また個人差もあるので、その患者様にとって「正常」か「異常」かを常に意識して行動しましょう。

血圧や体温などの数値的な結果だけではなく、顔色や食欲など色んな視点から「観察」できるよう心がけましょう。

判断の材料は多いほど良いです。
医師はずっと病棟にいるわけではありません。患者様にとって病院で一番身近な存在は看護師です。

特に異常の早期発見にはアセスメントが重要となります。
異常をいち早く捉えるためにも、日頃の患者様の情報収集には特に気を配ることが大切です。

 

 

まとめ

・看護過程は、「看護アセスメント」「看護診断」「看護計画」「看護介入(看護実施)」「看護評価」の5つ
・「SOAP(ソープ)」とは看護記録において必要な分析手法の一つで、「Subject(主観的情報)」「Object(客観的情報)」「Assessment(アセスメント)」「Plan(計画)」のこと。
・アセスメントとは、「主観的情報・客観的情報をもとに、分析・結合、判断・評価し、意見・印象などを記述する」こと。
・アセスメントを書くコツは「現状判断」「原因の特定」「今後について予測」の3つ

「アセスメントが上手く書けない」という人は、「現状判断」「原因の特定」「今後について予測」が漏れていないかしっかりと確認しましょう。

正確なアセスメントを行うことは患者様の負担を軽減し、早期治療に繋がります。
看護師に必要なアセスメントについて、ポイントやコツを押さえておきましょう!

 

この記事を監修した人

井川 玲子

井川 玲子 (京都大原記念病院グループ 看護介護部長)
※現在は同グループ ケアハウスやまびこ 施設長
看護師。足掛け41年にわたり京都第一赤十字病院および看護専門学校で専任教師・副学校長として勤務。長浜赤十字病院 看護部長を経て、平成21年4月1日より京都大原記念病院の看護介護看護部長として着任。現在にいたる。

※写真は京都”大原”の「大原女」に扮したときのもの

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