2018/04/09
看護におけるタッチング。効果的な方法は?
看護
こんにちは!京都大原記念病院です。
ナースは患者を看護する中で、常に患者に触れることになります。
この「触れる」という行為は「タッチング」と言って、医療現場ではとても重要な看護技術の一つです。
今回はこの「タッチング」についてのお話です。
看護におけるタッチングの目的や効果、効果的なタッチングの方法をご紹介します。
看護におけるタッチングとは
体調を崩して心細い時、「家族に手を握ってもらって安心して眠った」なんて経験はありませんか?
それと同じように、看護師が医療行為とは別に患者の手を握ったり背中を優しくさすったりする行為を看護用語で「タッチング」と言い、患者へ安心と安楽を与えるための非言語的コミュニケーションです。
【タッチングの種類】
手を当てる・さする・揉む・圧迫する・軽くたたく など
患者の身体に手を当てたり、さすったりすることで痛みや不安を解消したり、患者の心を開かせて看護師との信頼関係を構築したりする効果があり、特に小児医療や終末期医療などでは欠かすことのできない看護技術の一つです。
看護現場でのタッチングの目的と効果
タッチングの目的・効果は主に下記の3つです。
痛みや違和感を緩和する
患部をさする・圧迫することで太い神経線維(Aβ線維)を刺激し、それによって痛みが緩和するという効果があります。(※ゲートコントロール理論)
適切なタッチング技術を用いて患者へ優しく触れることで患部の痛みや違和感を緩和することができるのです。
不安を解消して安心感を与える
身体を優しく触れられることによって脳の神経伝達物質「オキシトニン」が分泌されます。
このオキシトニンには、不安やストレスを緩和する、痛みを和らげる、脈拍や血圧を安定させるという作用があります。
体調が悪く辛い、不安な時にそばにいてくれるということを実感できると、安心感を得ることもできますよね。
信頼関係を築き、相互理解を促す
看護者が患者に直接触れることで相互の信頼関係を構築し、患者に心を開いてもらうことにもつながります。
患者が心に思っていることを表現しやすくなるため、患者の情報をたくさん得ることができスムーズな看護を行うことができます。
※ゲートコントロール理論とは
痛みの信号は、痛みが発生した場所の末梢神経から太い神経を通って脳に送られます。
この太い神経に痛みの信号の流入をコントロールするゲート(門)があります。
痛みが発生した時にその部分をなでたりさすったりすることは、その刺激で痛みのゲートを閉め、痛みを感じにくくすると言われています。
効果的なタッチングを行うポイント
タッチングには看護師と患者との信頼関係を深める効果がありますが、スキンシップの少ない文化的背景を持つ日本人にとっては、タッチングを行う時点で既にある程度の信頼関係が築かれていることが必要です。
タッチングは単純に身体に触れれば良いという事ではなく、患者の心に寄り添ったケアを行うことが大切。
まずは患者の状態や状況、性格などをよく観察し「お背中をさすりましょうか?」と、体に触れても良いかどうか確認しながら行うようにしましょう。
「自分だったら、いつ、どこを、どうしてもらったら嬉しいか」を考えて行うと良いですね。
具体的なタッチング方法とそのポイント
手を当てる
患者が痛みや違和感を感じる部分へ手を当てるのは、タッチングの中でも基本的な技術となります。
患部を軽く包むようなイメージで優しく手を当てましょう。
手のひらには適度な温度と湿度があり、手を当てることで患部がじんわりと温まります。
手が冷たい場合は、温めてから当てると良いですね。
さする
リラクゼーションを目的とする時には、患者の背中や肩、手の甲を優しくさすり、痛みの緩和のためにはある程度の圧力を加えながらさするのが良いでしょう。(ゲートコントロール理論)
手のひらを使い1秒間に1~10cmほどのスピードでゆっくりと優しくさするようにしましょう。
手を動かすスピードが速すぎるとリラクゼーション効果が薄れてしまいます。
揉む
筋肉の緊張をほぐして血流やリンパの流れを良くする効果があります。
専門的なマッサージでなくても、患部を手でつかんで離すという動きの繰り返しで問題ありません。
圧迫する
揉むことよりも動きが緩やかで刺激が少ないため、寝たきりの患者などに施されることが多いです。
継続的に手を当てることにもなり、痛みや違和感、不安の解消などの効果もあります。
軽くたたく
一定のリズムで患者の体を軽くたたき刺激を与えます。
たたくタッチングは「注意喚起」の意味や、一定のリズムで優しくたたくことで神経を落ち着かせる効果もあります。
まとめ
患者に安心感を与え、苦痛を和らげるのに欠かせない看護技術「タッチング」。
タッチングは、患者の状態に合わせていくつかの手法を組み合わせて行う事がほとんどです。
タッチングを行う看護師と患者の信頼関係が深いほど、その効果も高くなるでしょう。
それぞれの患者に適した効果的なタッチングを取り入れ、患者の身体だけではなく、心に寄り添った看護ケアを行いたいものですね。
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この記事を監修した人
- 井川 玲子 (京都大原記念病院グループ 看護介護部長)
※現在は同グループ ケアハウスやまびこ 施設長 - 看護師。足掛け41年にわたり京都第一赤十字病院および看護専門学校で専任教師・副学校長として勤務。長浜赤十字病院 看護部長を経て、平成21年4月1日より京都大原記念病院の看護介護看護部長として着任。現在にいたる。
※写真は京都”大原”の「大原女」に扮したときのもの