2021/01/27
本当は人見知りの私が、心温まる瞬間に出会えたエピソード
介護職
京都大原記念病院グループでは昨年の「介護の日(11月11日)」に合わせ、職員研修の一環として「介護やケアの仕事を通して感じた心温まるエピソード」を募りました。投稿者の想いや心が動いた瞬間が込められた149作品が集い、介護職 中野梨佐さん(おおはら雅の郷)のエピソードが「最優秀賞」に選ばれました。これを記念し、中野さんに日頃の想いを聞いてみました。
この仕事が「好き」です
こんな風に評価してもらって驚いていますが、うれしいです。
母が保育士で、私も子供が好きなこともあり、もともと私は「保育士」を目指していました。授業で実習があったのですが、高齢者福祉施設に行くことになって。子供の頃、祖父母と一緒に暮らしていた私には身近に感じました。結局、この実習がきっかけで介護の仕事をしたいと思うようになりました。
今、私はこの仕事が「好き」です。実はコミュニケーションはどちらかと言えば苦手で、本当は人見知り。話しかけに行くのも苦手ですから。だけど人と関わること自体は好き。それが一番なのかなと思います。
現場のみんなそうだと思いますが「ありがとう」とか「あんたと話していると元気になるわ!」とか声をかけられたりすると、やっぱり嬉しくて。普段笑わない方が笑ってくれたり、(日常の生活動作で)できなかったことができるようになった姿を見たり。そうした変化がとてもうれしくて10年続けてこられたのだと思います。
思い出が大切な人に届いた
投稿したのは、昨年(2020年)に経験したピアノの先生をされていた方とのエピソードです。
私は、幼い頃にピアノを習っていたので「一緒に弾きたいですね」とよくお話をしていました。実際、なかなかその機会が作れずにいたのですが、なんとか時間を作れて声をかけると「行きましょう」と応じてくださいました。
半身に麻痺があり片手の演奏でしたが、奏でる音色はとても綺麗で優しいものでした。音色に誘われるように、たくさんの職員がピアノの周りに自然と集まってきました。それだけでも素敵な光景だったと思いますが、心に残ったのは、その後の話が理由かもしれません。
残念ながらその方は、状態が悪化されてお亡くなりになりました。その日、私は勤務日ではなかったのですが、対応してくれたスタッフがご家族に、ある写真をお渡ししたそうです。一緒にピアノを弾いた時の様子を、他のスタッフが撮影してくれていたものでした。
たまたま、良い光景だからと撮影しただけかもしれません。ですが、その写真を「きっとご家族が喜んでくださるから」と手渡してくれました。打ち合わせていたわけでもないのに、その方の思い出が大切な人に届いたんです。
手渡した時にはご家族も「こんなことをして下さったんですね」と喜んでくださったそうです。自然とそうしたチームプレーが生まれたことが純粋に「素敵だな」と思いました。みんな優しいんだろうなと思います。ゆったりと療養していただく施設なので、こうした気持ちは大切にしていきたいです。
誰よりも理解したい
現場は同世代も多いので、子供が小さいうちは家庭の状況も考慮して、勤務も柔軟に調整してもらえます。私も最初は日勤だけにしてもらっていました。その分、担当するご利用者の日中の様子は誰よりも理解していると言えるようにコミュニケーションを取っていました。
ただ、カンファレンス(※)で、ご利用者の様子を報告しようと思うと、、、当然ですが、夜勤帯のご様子は周りに聞いて回らないといけないんですよね。そこに違和感があって。やはり「自分の目で見たい」と思い、夜勤を希望して、最近は無理のないペースで入れてもらっています。家族も協力してくれて感謝しています。
※カンファレンス:対象となるご利用者の現状や課題点などを各担当者が報告し、チーム内で協議しながら、より良い支援方法を検討する場
ずっと現場で。「笑顔」が力に
人それぞれ性格も、想いも違いますので、一人一人に寄り添ったケアは本当に難しいです。子供もまだ小さく、家のことを考えるとあまり遅くまで残業はできません。どうしても時間内に終えることが最優先になってしまうこともありますが、私は(ご利用者の)想いに一歩踏み込んだケアがしたい。ご利用者一人一人の「笑顔」を大切にしていきたいです。
経験も積んでご利用者とのコミュニケーションを通じて、ちょっとした変化にも気付けるようになっているように思います。それを活かしてその人らしさを大切にしたい。介護に関わるスタッフとして知識の幅を広げて、ずっと現場でご利用者と関わっていきたいです。これからもできる限り、現場でたくさんの「笑顔」に出会えるようにがんばっていきたいなと思います。