想いを綴る
――秋の雲 急がず騒がず 生きている
秋の高い青空を眺めながら、人生を受け入れ、穏やかに雲のように生活したい、そんな思いが表れている。この詩の作者は、魚谷浩昭様。博寿苑通所リハビリテーションに通い、熱心にリハビリに取り組んでいる。2014年に脳梗塞で倒れ、入院。左半身麻痺と、高次脳機能障害が残った。入院時からリハビリに熱心に取り組まれ、現在は家族や職員と一緒にかなりの距離を杖で歩行できるようになった。
しかし、どんなに身体のリハビリを頑張っても、後悔や将来への不安は尽きない。後遺症から感情のコントロールができず、苦しんだ。絶望で目の前が真っ暗になることもあった。身体とともに、心も救えるリハビリはないのか。そこで博寿苑で取り組むようになったのが、詩歌をテーマにした机上のリハビリだった。「文学青年になりそこなった」と笑って話していた魚谷様。短歌を詠めるようになりたい――第二の人生の、新しい趣味がリハビリの目標になった。
最初は百人一首や松尾芭蕉、正岡子規、石川啄木、種田山頭火らの作品をなぞり、名作に親しみ、言葉をインプットした。次のステップとして、季語のみを示し、自分で作品を考えるようになった。奥様にお話しを伺うと、「以前はじっと黙りこむと悪い方悪い方へ考えてしまったが、今は言葉を調べたり、五・七・五……と数えたり、とても張り合いがある様子。優雅な季語に触れ、『こんな言葉があるんやなぁ』と一緒に話したりしている」と、明るい声で応えてくれた。
様々な喪失を経験し、一人で抱え込むには辛すぎる病と後遺症。しかし、思いを綴り、自己表現することで、精神的に豊かな生活を取り戻す一歩となった。
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