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背筋をのばしてしっかり歩いて健康に!

 

いつまでも健康でいるために予防が大切

健康長寿とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を意味します。日本で右肩上がりに伸び続ける平均寿命と、健康寿命の差は男性で平均して8.84年、女性で12.35年(厚生労働省_第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料(2018年))存在し、この間は言い換えると不健康寿命とも言えます。

京都に目を向けると、男性は約10年、女性は約14年となっています。平均寿命は男女ともに全国でも高い順位に位置(男性:3位/女性9位)しているものの、健康寿命でみると中盤以下(男性:28位/女性:44位)というのが実情です。(平成30年版高齢者白書)残念ながら、長生きだけど不健康と言えます。

65歳以上の方が要介護になる主な要因は、脳卒中、認知症が上位を占めます。さらに要介護5になった原因の疾患に絞るとこの2つの疾患で半数以上を占めるようになります。いつまでも健康でいるためには予防が大切です。

 

生活習慣の改善と適切な運動を

2019年5月世界保健機関(WHO)が認知症ガイドラインを発行し、予防指針のポイントを示しました。そこでは「運動」「禁煙」「高血圧の治療」「糖尿病の治療」が強く推奨されました。サプリメントや脳トレなどは推奨項目としては挙げらなかったことを考えると、悪いものではないもののそれだけで予防できる方法ではないということであると思います。生活習慣の改善はもとより、適切な運動が大切であり、これらは脳卒中予防や認知症予防だけでなく生活習慣病の予防と広く捉えることができると思います。

 

運動はしすぎると良くない

脳卒中は大きく出血(血管が破れる)によるものと、詰まる(梗塞)によるものがあります。それぞれに運動と発症リスクの関係は少しずつ違います。運動と脳卒中発症のリスクを長年追跡調査(コホート研究)されました。

その結果では、脳卒中全体を捉えると普通ペースで約1時間半歩行する程度の負荷量で、3割程度 脳卒中発症のリスクが下がるとされ、運動を継続(負荷量が増す)してもリスク水準はあまりあがることはありません。

しかし細分して出血性に焦点を絞ると、最初は全体と同じく発症のリスクはさがるものの、過度に負荷がかかるとかえって何もしないよりリスクが高まることが分かっています。例えばジョギングなどの激しい運動を1時間以上継続した時の発症リスクは、何もしない時よりも高くなります。こうした背景を考えると、適度なジョギングはもちろん良いのですが「しっかり歩くこと」が一番良い方法だろうと私は考えています。

 

姿勢よく歩きましょう

ただし姿勢よく歩くことが大切です。高齢者の歩き方にはいくらか傾向があります。「縦揺れ小さい」「横揺れ大きい」「歩幅が小さい」(図)心当りはあるでしょうか。こうした傾向は意識すればある程度は改善できます。

健康のために歩くという意味では「肩の力を抜く」「背筋を伸ばす」「あごは軽く引く」「軽くひざを伸ばす」「いつもより少し広めの歩幅で、かかとから落とす」「(後ろの足は)親指の付け根で押し出す」これらを意識して歩いてみてください。そうすれば、正しい重心移動(図)で歩くことができるようになるはずです。時には両手を大きく振り、また杖を使ったり、もしくはノルディックウォークのように手も使いながら歩行されることもいいと思います。大切なのは姿勢よく、しっかりと歩くことです。

背筋をのばしてしっかり歩きましょう

近年、新体力テストの結果などから高齢者の体力が若返っていると言われています。2015年6月に開催された日本老年学会学術集会で開催されたシンポジウムで「最新の科学データでは、高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあり、現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っていると想定される。個人差はあるものの、高齢者には十分、社会活動を営む能力がある人もおり、このような人々が就労やボランティア活動など社会参加できる社会を創ることが、今後の超高齢社会を活力あるものにするために大切である。」という声明も出されました。

「若い者に負担をかけたくない」という思いは共通してお持ちかと思います。自分の健康と自分の健康と体力を維持していくことが大切であり、そのためには歩くことが一番大切であると私は思います。私たち京都大原記念病院はリハビリテーションを専門として、病気で倒れたあと、また元気になれるように、患者様が自分のことを自分でできるようサポートすることが中心です。ただこれからは元気なうちから健康を維持していく、例えばロコモを予防するような働き掛けも大切と考えています。健康維持していくためには、皆さんにも自分の意識、自分で動くことが必要です。背筋をのばしてしっかり歩きましょう。

 

【備考】

2019年11月16日(火)、第30回日本老年医学会近畿地方会 市民公開講座が「地域で支える健康長寿」をテーマに開催され、京都大原記念病院 院長 垣田清人医師「リハビリテーションで築く明るい長寿社会」と題して講演しました。本記事はその内容の要旨をまとめて2019年11月29日に公開したものを、2024年7月30日に更新したものです。

 

【演者】

垣田清人

  • 京都大原記念病院 院長
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医

 

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