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【特集】睡眠に大事なのは時間だけじゃない!?

健康の社会的要因について科学的探求する「社会医学(疫学)」を専門とする京都府立医科大学 地域保健医療疫学 社会医学講座小山晃英さんに健康づくりの“生活習慣”について「座る」「睡眠」「飲酒」3つの視点から解説いただきました。第2回のテーマは「睡眠」です。本記事は、京都大原記念病院グループが生涯教育を通じてシニアの生きがいづくり、仲間づくりを目指す京都シニア大学と協働運営する京都シニア大学ウェルネス部での講演内容を採録したものです。

どれくらい体の疲れが取れているのかが大切

睡眠不足など、睡眠のさまざまな問題が慢性的になると、肥満、高血圧、心疾患や脳卒中などの発症リスクや死亡率のリスクにも関係することが明らかになっています。健康づくりにおいて、適正な「睡眠」はとても重要です。

睡眠には、時間だけではなく、睡眠で「どれくらい体の疲れが取れているのか(睡眠休養感)」も重要です。国は起きた時に「しっかり休めた」と、回復の自覚がある方を、78.3%(2019年)から80%(2032年)に向上することを目標に掲げています。

横になりっぱなしは、健康に悪影響

グラフは、年齢ごとの平均睡眠時間(青)と寝床にいる平均時間(薄緑・以下、床上時間)です。生物学的に、加齢に伴い睡眠時間が減ることは自然なことです。ところがグラフを見ると、65歳以上の平均睡眠時間は6時間を切るにもかかわらず、平均床上時間は20代から変わらず7時間を超えていることが分かります。

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/001254003.pdf

寝付くが悪くなって眠れない分をお布団で横になっていようとする傾向が見えますが、実は床上時間を長くしても体の回復度は変わりません。アメリカの地域住民における調査で、65歳以上の高齢者は、床上時間が長く(8時間以上)、睡眠で休養がとれている感覚ない場合に総死亡リスクが1.57倍に増加したことが報告されています。床上時間が8時間を超えないように、必要な睡眠時間(成人で概ね6時間以上)を確保できるように心がけましょう。加えて、起きる時間を後ろ倒しすると生活リズムがくるってしまうので、寝つきが悪い日もできるだけいつもと変わらない時間に起きるようにしましょう。

しっかり眠るためにできる工夫ポイント

寝つきが悪くなり、眠剤を服用する方もいると思います。長期的な服用に賛否両論あることは事実です。市販薬も、起きた時に睡眠休養感(しっかり眠れたという感覚)があれば、プラスに作用している可能性があるので一概に良し悪しは判断できませんが、むやみに服用して依存し、量が増えることは危険です。できれば体調に変化があっても相談ができるよう、かかりつけ医などから処方を受けることが望ましいです。

睡眠時間は季節も影響します。陽が早く上れば、目も早く覚めやすくなります。個人差はありますが、冬に比べて夏は20分程度、睡眠時間が短くなります。完全遮光カーテンを活用して、光が入らない寝室にすることも睡眠環境の一工夫です。

光という意味ではお家のLED照明の使い方も工夫してみましょう。いつまでも明るいと脳が活性化して寝つきが悪くなってしまいます。眠る1~2時間程度前から白色球から暖色球に切り替えるなど眠る準備をしてみることも効果が期待できます。

ずっと明るいと目がさえてしまう

コーヒー、緑茶、栄養ドリンクだけでなく、かぜ薬の中にも含まれる「カフェイン」も寝つきに関係します。体への影響を認識するには「カフェインゼロ」の生活を1週間程度続けてみると、違いを感じることができるかもしれません。その前後で、寝ている時間が前に比べると少し伸びたとか、起きた時の回復の実感が強くなった時は、それまで摂りすぎだったかもしれません。午後以降はカフェインなしで生活してみることも選択肢の一つです。

その他、睡眠前のルーティンを作ること、ゆっくりお風呂に浸かって体の深部体温を高めることも効果的です。

 

  • ■ 解説
  • 小山 晃英 氏
  • 京都府立医科大学 地域保健医療疫学 社会医学講座 講師
    長野県出身(長野県長野高校卒)。岡山大学医学部を卒業後、信州大学大学院医学系研究科 循環病態学講座にて博士取得。博士課程では、心血管代謝内分泌領域の基礎研究に従事した。現在は、京都府立医科大学 地域保健医療疫学にて、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)を軸とした疫学研究と、行動科学を取り入れた社会実験に取り組んでいる。

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