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当事者・家族とともに 高次脳機能障害の理解をひろげよう(第28回 脳外傷・高次脳機能障害リハビリテーション講習会を開催)

11月17日、北区の京都府立 京都学・歴彩館で、脳卒中や交通事故の後遺症である「高次脳機能障害」の理解をひろげることを目指し、「第28回 脳外傷・高次脳機能障害リハビリテーション講習会」が開催された。会は、京都府内の当事者・家族団体や医療機関等に在籍する支援者らを中心に約20名で組織する実行委員会が、日本損害保険協会の助成を受けて開催するもので、武澤信夫医師(御所南リハビリテーションクリニック)が委員長を務めた。

当日は協会より、自賠責保険料の運用益による自動車事故の被害者救済・支援としての趣旨を紹介された後、後援の京都府、京都市より激励のメッセージを受けて、武澤委員長より、28回目の講習会にあたり「5年ぶりの対面開催。今日を、地域において本人、家族を支えるためにどうすればいいのか。共に考える機会にしたい」との抱負をもって開会を宣言した。

第一部は、日本高次脳機能障害友の会で顧問を務める山口加代子先生(臨床心理士・公認心理士)が「高次脳機能障害 当事者と家族への支援 -高次脳機能障害支援法(仮)制定を願って-」と題して講演。見た目にわかりづらく、また「自分の障害に気づかないこと自体が高次脳機能障害」とも言える特性から、見過ごされがちになっている課題に言及。医療者も、入院中は社会的行動障害が顕在化しにくいため、原因となる脳損傷、脳卒中などによる身体機能の回復に注目しがちで、心理面も捉えた総合的診断ができる医療機関が少ない状況を紹介。特に未診断の当事者は社会に適合できず、社会的ひきこもりの傾向にある実態もあることから、「軽症例を含めた適切な診断で、本人・家族が理解でき、必要な支援につなぐ仕組みづくりに向けて高次脳機能障害支援法が必要」と考えをまとめた。

第二部は、本会のテーマ「当事者・家族とともに高次脳機能障害の理解をひろげよう」に基づくシンポジウム。当事者、及び家族の立場から経験が語られた。
前半の当事者講演では、障害を負ってから現在に至るまでの経験が率直に語られた。高次脳機能障害と診断される前の職場で「若年性認知症か?」と半分笑いながら言われた場面は今でもはっきり覚えているという。家族会や支援者との出会いを糸口に、自分の障害の特徴を詳しく知り、「自分の取扱説明書」をもって障害をオープンにして前向きな求職活動に取り組めたという。現在は病院で施設案内やデスクワークに取り組んでいる。

高次脳機能障害は後天性の障害と言われ、過去を振り返ることが多い傾向にあると言われる。水谷氏も「過去の出来た自分と今の自分を比較してしまうことが多かった」と言うが、過去は変えられないことに気づき、「今は自分が楽に楽しく、前を向いて生活できるよう毎日意識付けをしている」と自信の経験を紹介した。最後に同じ当事者や、支援者が増えていることにも触れ、「今の自分を理解して、当事者同士が繋がる事も大事。人に迷惑をかけてもいいと思ってほしい」とメッセージを送った。

後半はご子息が交通事故で脳外傷を負い、高次脳機能障害を発症した「家族」の立場から2名が発言。両者の背景は異なるが、共通して突然の障害により本人だけでなく自分(家族)の生活も一変した経緯に触れながら、「本人に寄り添う気持ちが重要。できること、興味があることに少しずつ取り組んでみてほしい」とした。自らの語りかけに些細な「共感」を得られた時の喜びに触れ、「忍耐が必要だが、道は開ける。辛い時は家族会のつながりも頼り“自分の人生”を生きてほしい」と家族へのエールが贈られた。実際、1人は30年以上前の交通事故をきっかけとする障害でありながら、14年前から一人暮らしを始め、今も実家近くで家族が必要なサポートをできる距離で一人暮らしをしているという。ここ数年は、「焦らずありのままの今の自分を受け入れ、今できることに前向きになれてきたように感じている」とし、「今後のことも心配は尽きませんが、いずれ生活支援など家族以外のサポートも借りて、本人の望む自立した形での生活が維持できるように願っている」と今の想いを語った。

5年ぶりの対面開催とオンラインを併用して開催し、京都府内外から当事者・家族らを中心に約130名が参加。会場では登壇者への質疑だけでなく、来場者同士が交流するシーンも多数見られた。「知識だけでなく、当事者、あるいは家族の立場からの想いを知ることができたことがありがたい」との感想も聞かれ、今回掲げた「当事者・家族とともに高次脳機能障害の理解をひろげよう」のメッセージが確実に届いた様子も見受けられました。
閉会に際して、実行委員長の武澤医師からは「今回5年ぶりの対面開催となり、多くの方とお会いすることができた。つながりを大切にしたいし、してほしい。助けを求めることも一つの自立の形。その機会を提供できるよう来年以降も続けたい」との展望をもって会を閉じた。

本講習会は、日本損害保険協会の助成事業として、京都府医師会、看護協会をはじめ17団体の支援を受けて開催。後日、実行委員会内で振り返りの場を設け、次年度以降の方針を検討される。近日中にアーカイブをグループLINE公式アカウントより配信する予定。

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