水源の里・久多(2) 豪雪の冬は脱出する人も ADL向上が意欲生む
大原から途中を越えて、安曇川沿いの国道367号線(通称・鯖街道)を朽木方面に向かい、葛川から久多川沿いの山間の道を約5㎞入ったところに久多はある。市内中心部から車で約1時間程度で、日本の原風景たる自然豊かな里に出会える。夏は冷涼、冬は極寒にて豪雪に見舞われ、時として閉ざされた状況になることもある。そのため、冬季においては、滋賀県や京都市内の別宅や家族宅に居住する方もいる一方、何とか自活し続ける方もいる。
地区の医療体制などについては、毎週火曜日に医師会より派遣された医師が地区の診療所で診療を行っている。毎回約20名程度が受診。消防施設は30分程度離れた隣町に出張所があるだけで、救急時の対応はヘリコプター輸送である。山間地域であることから、保存食品が大半を占め高塩分食が主流となるため、地区の高齢者の大半は、高血圧症や高脂血症の慢性疾患での診療となっている。
地区内に学校はなく、小学校へはスクールバスで大津市域の葛川へ通い、高校進学と同時に地区を離れていく。そのこともあり、近年過疎化が進んでいる状況にある。
集落として発展した経過から、地縁は確固たる関係作りをなしており、それぞれ“講”という集まりのもと、家族・地域支援を中心とした“共助”が地域の生活スタイルとして地域の高齢者の援助として成してきた。
地域的な問題から、公的サービスとしての支援を確立することが困難であったことは否めない。
老後に関しての意識調査において「在宅での自立生活を希望する」が一番となっているが、この10年間の福祉制度の変革を受けて福祉サービス利用への希望が多くなっている。その中心的存在として、いきいきセンターでの活動はなくてはならないものとなっている。
一般的に在宅サービスの充実やインフラ整備は地域住民のQOL(生活の質)向上に不可欠なものであるが、とりわけ過疎地域においてはADL(日常生活活動)向上がなければ、QOL向上を求めることは困難である。ADLの維持・向上があってこそ、QOL向上の意欲へとつながる。次回は久多での援助の展開について報告したい。
水源の里・久多は、3回にわたって掲載しました。
水源の里・久多(1) 茅葺の民家、四季の景観 高齢化率61%、進む過疎化
水源の里・久多(3) 自立支援に強いニーズ 近隣の助け合いは今も
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