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【特集】元気を保つ、5つの予防!

1月30日(木)京都シニア大学の一般教養講座で、京都大原記念病院 副院長 三橋尚志 医師が「元気を保つ、5つの予防」と題して講演しました。京都新聞ホールに集まった同大学の学生約200名が聴講されました。同大学とは2019年春から、心と体の健康をテーマに「ウェルネス部」としても活動を重ねています。講演の要旨をご紹介します。

介護予防にまつわる5つの考え方

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活を送ることができる期間を示す「健康寿命」の重要性がいよいよ増しています。その意味で、要介護状態を未然に防ぐこと、または既に要介護状態の場合は状態が悪化しないよう努めることを意味する「介護予防」も大切になります。

介護予防には従来大きく3つの考え方がありました。まずは適切な運動などを通じ(要介護状態のきっかけとなる)病気にならないための「一次予防」。そして、病気などを早期に発見、治療するための「二次予防」。病気を発症しなんらか後遺症が現れた時のリハビリテーションに取り組み早期社会復帰を目指す「三次予防」というものです。こうした考え方のなかで、市町村など自治体や地域のボランティアが主体となって介護予防の普及・啓発活動や各種健診事業などが展開されています。近年はこれに加えて「0(ゼロ)次予防」「つながる予防」という2つの考え方の重要性が提唱されるようになりました。

 

環境面から健康づくりを促す

「0(ゼロ)次予防」とは、「健康づくりの行動を助けるための環境づくり」を意味します。例えば、タバコの値上げや喫煙所の撤去などが分かりやすい事例です。健康に悪影響を及ぼすタバコを吸える環境を無くすことで、禁煙を促しています。飲食店等でのカロリー表示も、その表示から適切な食事量を心がけるよう促す意味で同様の位置づけと捉えられます。

事例として当院が回復期リハビリテーション病院となった頃の話をご紹介します。おむつを着用される患者様を、看護師や介護職を中心に時間を決めてトイレ誘導をするようにしました。すると患者様から自発的に「トイレに行きたい」という声が上がるようになりました。おむつをしていると、尿意が分からなくなりますが、一定のハードルを設けることで排泄の自立に近づくことができました。こうした場面も経験し、安全面から言えばベストなバリアフリーも、介護予防という面からすると必ずしもそうではないということを感じます。

「自分の体質を知って取り組む健康づくり」という意味もあります。滋賀県長浜市では「健康づくり0次クラブ」として長浜市と京都大学が共同で約1万人の住民を対象に健診を実施し10年以上の追跡調査など実施されているほか、健康づくりに関するさまざまな普及・啓発活動を実施されています。検診に参加されている方は全て有志で集まった方ということで、非常に興味深く、すばらしい取り組みと考えています。このように環境面からの取り組みも様々に存在します。

 

周囲とのつながりが健康を維持する

もう一つは「つながる予防」。例えば脳卒中などを発症し、何らかの後遺症が現れた場合、身体機能を取り戻して家に帰ることを目標にリハビリテーションに取り組みます。しかし、家に帰れたからといってそれだけでいいものではありません。

人は家庭や地域社会、職場や学校など何らかの集合に参加し、様々なつながりのなかで生きています。病気などをきっかけに要介護状態となると、外出が減り、結果として周囲とのつながりが薄れて家に閉じこもってしまうこともあります。病気にともなう障害は、手や足が動かないといった身体機能面だけでなく、周囲とのつながりや家族との円満な生活ができなくなることへと本質が変化して行くと言えます。

当院の役割は脳卒中の後遺症などを抱えた患者様の社会復帰を支援することです。退院支援をする時にもこうした目線は多職種で持ち、入院前に何らかの団体に参加し活動されていた患者であれば、どうすれば会場への移動がしやすくなるか、会場での活動がしやすい状態になるのか。そうした目線で目標を立てて、支援に当たっています。

2025年には団塊の世代が全員後期高齢者(75歳)を迎えます。こうした背景を踏まえ、住み慣れた環境で過ごし続けられる仕組みとして地域包括ケアシステムが提唱されてきました。しかし、75歳という年齢の方は最近非常にお元気です。

近年は看取りの増加、高齢者の孤立・困窮など様々な社会的諸問題が見込まれる2040年に向けた「地域共生社会」が意識され、若者から高齢者まで幅広い世代がつながり共生していくための仕組みづくりが模索されています。

 

いつまでも健康に

病気の予防、早期発見・治療、適切なリハビリテーションに加えて、近年は健康づくりの行動を助けるための「環境づくり」や、家族、友人、社会、職場などとの「つながり」も健康を維持していくうえでは大切になることを知っていただければと思います。

 

【Profile】

三橋尚志(みつはしたかし)

  • ■役職等■
  • 京都大原記念病院 副院長
  • 京都大原記念病院グループ 医療連携室 室長
  • 一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会 会長
  • ⇒ 就任記念インタビューはこちら

 

  • ■資格等■
  • 日本リハビリテーション医学会指導医
  • 日本整形外科学会指導医
  • 日本リウマチ学会指導医

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