1/1,300の想い

介護の日 特別座談会|つなぐ想いを、安心に変える。

高齢化などで介護を取り巻く課題が多様化するなか、誰もが介護を身近なものと捉え、それぞれの立場で考え、関わることが必要になっています。こうした背景から平成20年に、厚生労働省において、11月11日を「介護の日」と定められました。「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」を念頭に、語呂にかけてされたもので、例年、この日に合わせて介護への理解を広めるための様々な活動が行われています。

京都大原記念病院グループには約400名の介護職員が、想いを持って従事しています。今年も介護の日を迎えることを機会に、現場が抱く想いを言葉にしたいと特別座談会を開催しました。集まったのはベテランから若手まで、介護に関わる4人の職員。経験も立場も違うメンバーが語り合い、垣間見えた、つながる想いをお届けします。

※座談会は10月某日 大原リバーサイドカフェ来隣で実施しました。

利用者の安心した表情に、想いが伝わった喜びを感じる。

磯部:
今日は皆さんが日頃、どんなことを思いながら仕事をしているのか。お話を聞いていきたいと思います。介護をやっていてよかったと思うことから聞かせてもらえますか。

安達:
私はたくさんコミュニケーションを取っていたご利用者が、私の名前を憶えてよく口にしてくださる様子を見たり聞いたりすると、やっぱり嬉しいです。それと2年目になって、管理栄養士の資格も活かしてできることが増えてきました。ご利用者の食事量の減少を把握した時にチームの看護師や介護の先輩、上司に伝えて対応を工夫できたことも嬉しかったです。

矢野:
なんかいいですね。先日、お見舞いに来られていたご家族が「一緒に写真を撮ってよ!」って声をかけてくださいました。一生懸命関わってきたご利用者のご家族ですが、実はもう担当を離れているんですよ。介護は何が正解かわからないですけど、そうして声をかけてもらえると「やっていてよかった。間違ってなかった」って思えますね。

磯部:
ご利用者の“穏やかな生活の助け手”となれるように、一生懸命やった結果、ご利用者やご家族が声をかけてくださる。想いが届いたようで嬉しいですね。田邉さんは2人は少し立場も違ってくると思いますが、どうですか?

田邉:
ご利用者の良い表情が一番の楽しみなことは変わりませんね。ご利用者が何を望まれているのか。今の私はチームをまとめる立場として、ご利用者、ご家族、ケアマネジャー、セラピスト、看護師、介護職員などいろんな方と関わりながら情報を集めて、仮説を立て、プランをまとめて実行し、評価して見直す(介護過程)。いろんな立場の人が関わる調整は楽ではないですが、安心した表情だとか、楽しそうな表情を見ると「よかった!」って思えます。

矢野:
通所施設ではいろんな人とスピード感をもって連絡を取りあわなくちゃいけないから大変ですね。

田邉:
通所リハビリテーションに来た頃は、トラブルがあっても何が起きているかわからないという状況もありました。そこから少しずつ改善して、今のリーダーや相談員もかなりスピード感をもって報告してくれるので、安心して見ていられます。

磯部:
話を聞いていると、若手からベテランまで受け継がれ、つながり、織りなされる想いを感じます。逆に大変なことはないですか?

介護だからと、特別に大変な仕事だとは思わない。

安達:
特に新しく入所された方のところに、情報が少ないまま(日中と比べたら手薄になる)夜勤で入るとすごく心配で。でも、自分がしっかりしないと次の人も困るし、何が危険で何に注意が必要なのかをしっかり考えないと、と思いますがまだまだ難しいです。

田邉:
すごく大切なことですね。
通所リハビリテーションは食事・入浴・排泄の介助だけでなく、レクリエーションもあれば、リハビリテーションもある。加えて、150人のご利用者の顔と名前、送迎ルートも覚える。やることの幅は広いですね。ただ、他の仕事と比べて介護職員だけが特別に大変な仕事だとは思わないです。私は以前に営業職をやっていたこともありますが、どんな仕事にもプレッシャーやトラブルはありますからね。

磯部:
とても共感します。テレビや新聞でも、どうしても介護が特別大変な仕事と感じる内容が多いですが、そもそも仕事は大変なものですよね。捉え方ひとつで大きく感じ方が変わりますね。

ドラマや映画に、当たり前に介護職員が登場するように。

矢野:
2年目の頃、先輩と話をしている時に「ドラマとかでお年寄りの最期っていう時に、医師と看護師と家族しか映らないでしょ。僕はそこに介護職員を登場させたい」と話を聞かせてくれました。

磯部:
確かに、介護施設はイメージしづらいのでしょうか…。

矢野:
そうかもしれません。(大原ホームで)看取り期のケアを、介護職員が主になって対応することに驚かれるご家族も多いです。
ドラマや映画に当たり前に登場するようになるって、介護の専門性が理解されて社会的立ち位置を確立することだと思います。だから先輩の言葉は「熱いな!」って。「矢野なら共感して、やってくれる」って、夢を言葉にしてくれたことも嬉しかったです。医療・介護に幅広く取り組む京都大原記念病院グループだからこそ発信できることがあるはずですし、大きな目標(夢)があると思いましたね。まずは大原ホームからがんばりたいなと思っています。

磯部:
ぜひ、介護の専門性について認知を広めたいですね。田邉さんはどうですか。

田邉:
家族の介護をきっかけにこの仕事に就いたこともあって「自分が今いる施設に身内を安心して預けられるか」ということはいつも意識しています。安心して任せられる施設は、職員も安心して働ける施設だと思います。その想いを共有できる職員を増やしたいし、(関わる事業所を)そういう場にしていきたいですね。

安達:
素敵ですね。私はもともと管理栄養士を目指して病院のインターンシップを探していた時、たまたま京都大原記念病院グループを知りました。話を聞くうちに、現場をしっかりと知ったうえで管理栄養士を目指したいと思うようになって、入職しました。

磯部:
グループならではの働き方の特徴もありますよね。介護の現場を知って、自分の描く未来に向かって自己実現する。みんなの選択肢が増えていくといいなと思います。

安達:
実際、食事の様子だけを見ていると分からないことがたくさんあるということに気がつきました。例えば、食事がとれない場合、離床時間や、入浴のタイミング、排泄の状況、疾患の症状や服薬の状況など、食事以外の課題が影響しています。今はそういう知識をひとつひとつ増やして「食べる」以前の状況を意識して関われる管理栄養士を目指しています。

矢野:
現場にこういう管理栄養士がいると心強いですね。

田邉:
想いはそれぞれ。でも、常に中心にご利用者がいて、それをチームでケアしているっていうのはみんな共通していると思いました。

磯部:
今回の座談会で、京都大原記念病院グループの文化といいますか、介護が目指すものを共有できた気がします。これからも、ぜひ大原の介護が目指すものや想いを発信していきましょう!

一同:
ありがとうございました。

<特別座談会を終えて>

想いを守り、伝える環境や仕組みを目指して。

介護において画一的なケアは成立しません。また、治療とは違い、治ったかそうでないかを成果・結果として示したり、感じたりすることがとても難しいという側面を持っています。その前提で、介護の質を評価し、高めていく意識を醸成するために、感じたことや経験を言葉にしてアウトプットすることが重要なプロセスになると考えています。言葉を交わすなかで共感が生まれ、認められる。サービス提供の当事者にとってはそこで初めて、一つひとつの「良い経験」が、はっきりと「成功体験」に変わります。そこが起点となり、想いがつながっていく。このプロセスが、結果的にご利用者、ご家族の安心につながると信じています。介護現場の想いを守り、伝えていく仕組みをつくるために、15年間の現場経験を経て手を挙げ、現在の立場となりました。

基本は対話です。約10年前に作成した200項目の介護スキルを表記したOJTチェックシートを用いて年4回行う、新人と教育担当者の対話。どのようなキャリアビジョンを描き、そのために何が必要かを確認する年2回の上司との対話。実体験エピソード投稿する研修企画を通じたすべての職種との対話。介護基礎力、キャリアビジョン、実体験の視点から対話を重ねています。

現場一筋を貫く職員。現場を1年間経験し人事に転身した職員。同様に転身した後「視野が広がり、もっと現場を知りたくなった」と再び現場にチャレンジする職員。介護から医療に舞台を移し、事務総合職として医療拠点のマネジメントを担う職員。対話と経験を重ねた職員は幅広く活躍しています。介護視点だけで介護を捉えるのではなく、複眼的に捉えて医療・介護サービスを発展させてきた実績と土壌に魅力を感じる若手職員も近年増えてきました。想いを守り、伝えていくためにも一人ひとりが未来を見失わない環境や仕組みを追い求めます。

 

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