1/1,300の想い

しっかり食べて、 しっかり動いてもらう。 そのためにできるコトとは。

2021年10月に「食事改革プロジェクト(以下、プロジェクト)」を立ち上げ、京都近衛リハビリテーション病院で活動を開始しました。食事への想いや、目指すものをプロジェクトリーダーの中西輝子管理栄養士に聞きました。聞き手は、同補佐を務める堀川涼氏です。

 

食への意識を変えていく

 

堀川涼(以下、堀川)-

今回のプロジェクトですが、何を目指していくのでしょうか。

中西輝子(以下、中西)-

一言で言えば「リハビリの活力となる食事」が目指す姿です。「食事改革」と言うと献立のリニューアルをイメージされるかもしれませんが、プロジェクトで一番変えていきたいのは食事に対する「意識」です。

堀川-

先日、栄養科でタンパク質の摂取基準量について議論されていましたね。

中西-

一般的に回復期リハビリ病棟で望ましいとされる基準に対して、患者様の年齢や状態など個別の要因も考慮した時、当院としての基準をどう設定するかという内容でした。

重要なのは、設定にいたるプロセスだと考えています。説明者がそこに参加することで、「これが病院の基準です」ではなく「標準値をもとに、ご年齢などを考慮して設けた当院の基準です」と当事者として説明することができるからです。受け手の納得感も変わると思います。

  • ※体重1㎏あたり、1日2g~1.5g以上

 

「栄養を食事で表現すること」が管理栄養士の役割

 

堀川-

その時、最近身近に経験されたこともお話されていましたね。

中西-

がん末期の方が退院時の栄養指導で「食べたらいけないもの」の一覧を受け取られたというエピソードです。病状を見れば必要な指導だったと思いますし、ご本人も喜ばれていました。ただ、余生を家族と過ごすための退院と考えれば…疑問もありました。私たちの役割を考えた時に、大切な話だなと思って共有しました。

堀川-

あらためて、管理栄養士の役割とは何でしょうか。

中西-

私は「栄養を食べ物で表現すること」だと思っています。患者様の好きな食べ物の話になった時に、お膳、食卓、台所、冷蔵庫の中身、(患者様がご自宅に帰られた時)どこでどのように買い物するのかまで想像することが求められていると思います。そうでなければ、単なる栄養素の説明になると思います。

堀川-

「栄養を食べ物で表現する」そう考えるきっかけはあったのですか。

中西-

管理栄養士になったばかりの時の経験でしょうか。最初は現場(厨房)に入りました。三角巾をして、大きな鍋に1升瓶から醤油を入れて…と大変でしたが、今思えば、この経験が栄養だけでなくその先の食事を考えるきっかけになりました。単なる栄養管理ではなく、「栄養を食べ物で表現すること」が管理栄養士の役割だと考えるようになったルーツです。

それと、ある年の敬老の日に行事食をお出しすると「私たちにこんなに気を配ってくれてありがとう」とうれしそうに声をかけてくださる患者様がおられました。今でも印象深く記憶に残っていて、食事はやはり楽しいものであってほしいなと思います。

 

自分事となる経験の輪を広げる

 

堀川-

現在の課題はどのように考えていますか。

中西-

京都近衛リハ病院では、管理栄養士(4名)がそれぞれ食事の時間に病棟で、病状等により食事形態が変わった方などを中心に声をかけてお話を伺っています。とは言え、限られた人数ですので、患者様のご意見を直接耳にするのは看護師や介護職であることが多いです。そこから管理栄養士に伝えられますが、「患者様がおいしくないと言った」「わかりました、すみません」という通り一辺倒のやり取りになりがちなのも実情です。

堀川-

お互いの理解を広げていく必要がありますね。

中西-

最近、京都近衛リハ病院では「検食」を全ての職種が交代で行うように運用を見直しました。今後は食材選びのための「試食会」も積極的に行っていきたいと考えています。検食の主たる目的は食の安全を担保することですが、職員に食事を自分事として感じてほしいという意図もあります。食材選びの試食会も同じです。自分事として感じる経験が増えることで、患者様に掛ける声が変わり、また、作り手への敬意も生まれると思います。その変化が大切で、「おいしかった(おいしくなかった)」の伝言ではなく、「何がどのように良かった(悪かった)か」と、患者様の声を「次に活かす」という視点になると期待しています。

堀川-

プロジェクトに関連して厨房に入る機会が増えました。実際、現場を見ると、365日絶やさず食事をつくりつづけることに感謝しかありませんね。どちらかと言えば裏方ですが、だからこそ、時にはスポットを当てて発信していくことが大切だと思います。

 

目指すのは想いのバトンタッチ

 

中西-

プロジェクトに参加して、今まで知らなかった世の中の仕組みや、様々な人々との出会いがあり、仕事の醍醐味を感じています。

2022年2月には厨房の具体的な調理プロセスを見直し、同4月からは献立に反映していきます。何事もやってみて初めて見えることや、感じることがあります。プロジェクトを通して若いスタッフにも新しいことに挑戦するやりがいを伝え、何より「(患者様に)しっかり食べてしっかり動いてもらうこと」の喜びを共にしていきたいです。

堀川-

人がかわっても持続可能な仕組みを目指していきたいですね。

中西-

何かを継続することは「想いのバトンタッチ」だと思っています。しっかり食べて、しっかりリハビリしていただく食事をお出しし、患者様に丁寧な説明を添えること。そして職員

にも「なぜそうするのか」を伝え、想いをつなぐこと。それがないと意味がありません。仕組みだけでなく、想いを伝えていくことも大切にプロジェクトを進めていければと思います。

 

 

入院生活にご満足いただくための食事改革

食事は、入院生活における一番の楽しみであると同時に、栄養を口からしっかりと摂れることがリハビリ治療の効果に直結する治療手段の一つであることを臨床医として実感しています。活動量に見合う十分な栄養配分は勿論のこと、見た目や温度など、食べたいと思えるような病院食が理想です。しかし診療報酬制度や給食業界の事情など言わば提供側の事情で理想を叶えることが難しくなってきています。取り巻く環境が厳しさを増すなかでも多くの患者様の高い要望に応え続けるためには、本腰を入れて考えなければならないと、プロジェクトが立ち上がりました。単なる食事メニューの改革ではなく、患者様の食事に対する想いに寄り添う取り組みです。理想の食事サービスを目指していきます。

児玉直俊 京都近衛リハビリテーション病院 院長補佐

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