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認知症予防とACP(アドバンス・ケア・プランニング)|垣田清人医師が中京老人福祉センターで講演

中京老人福祉センターにお招きいただき、京都大原記念病院垣田清人医師が「認知症予防とACP(アドバンス・ケア・プランニング)」と題して講演しました。当日は定員を超える38名が参加。参加者からは「これからの人生生活に活かしたい」「友人にも教えてあげたい」など、ご好評のお声をいただきました。講演の要約をご紹介します。

「人生会議」の重要性

  • 「口から食物を食べることはもはや難しい。鼻から管をとおして栄養を取る経管栄養、胃に直接栄養を送る胃瘻を希望しますか。無理に治療はせず点滴で水分補給に留めますか。それともこのまま見守りますか」
  • 病気が進行して本人が意思表示できず、家族が意思決定を迫られるのは医療現場でよくある場面。本人は「何もせず見守ってほしい」と考えていても、そのことを知らない家族が意思決定を迫られた時にできることは全てやってほしいと願うことは誰にも否定できません。そのまま亡くなられた場合、残された家族には確認する術はありません。この治療選択の場面からも垣間見える本人と家族の意識のすき間に、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)、近年は「人生会議」として耳にする場面が増えた背景があります。

これからの生き方を考える人生会議

  • 人の命は「生物学的な命(=生命)」だけでなく、人々との関りで形成された「物語られる命(=人生)」と見ることができます。人生は自分一人で創るものではなく、家族や周りの人々の人生と重なり合い、浸透しつつ織り成されています。
  • 人生会議は、これまでどのように生きて来たのか。今、何をしているのか。これからどうして行きたいのか。と身近な家族らと会話すること。「もし医療が必要になった時にどんな治療を希望するか」も大切なテーマの一つになるでしょう。いざ決断が必要になった時の大きな安心材料になるかもしれません。人生の「終末」に向けた会議ではなく、これからの人生を楽しく自分らしく過ごせる「生き方」を考えるために人生会議を活用してほしいなと思います。それが日本人の平均寿命と健康寿命に最大12年の差を縮める一助になり、何より残される家族の安心につながるはずです。

 

 

声は最後まで届く

  • 意思表示が難しくなる場面として意識せざるを得ない「認知症」を、人生会議の視点に立って考えます。親が認知症を発症し、離れて暮らしているご家族(子)から「本人(患者)はおそらく、私を認識できない。会いに行くことに意味はあるのだろうか」と相談を受けることがあります。私は2つの理由から会いにいってほしいと思います。
  • 1つは認知症を発症した方でも「声」は最後まで意識に届く可能性が高く、視覚で認識できなくても声(聴覚)から認識できる可能性があるからです。もう1つは、ご家族自身のためです。一般的に認知症を発症する方が65歳以上であり、時と共に体力は低下します。やがて人生の終末を意識するようになった時、「もっと顔をみておけばよかったな」と後悔がないようにしてほしいなと思います。
  • 本日の話題が、これからの皆さんの「生き方」がより自分らしく充実したものとなるためのヒントになれば幸いです。

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