患者さんの想いを叶える看護を「創造」する(看護師F)
やさしいお姉さんに憧れて
幼少期、予防接種の時に“やさしいお姉さん”という印象を持っていたのかもしれません。幼稚園の頃から“将来は看護師になる”と言っていたようです。大学の看護学部を卒業後、急性期病院勤務と母校の教員を経て大原に入職しました。
急性期時代、命を助けるやりがいを感じていました。ただ、患者さんがあっという間に入れ替わり、業務に追われるうちに名前を覚えきれない状況には一人の人として接することができていないという感覚があったのも事実です。
脳卒中センターや消化器外科などを経験し、これからのキャリアを考えていた頃に母校から看護教員の誘いを受けました。それまで教育に携わったことがなかったので、いずれは現場に戻ることも考えながら教員に挑戦することにしました。教員時代は基礎看護領域※を担当。学生と過ごした毎日は、私にとって“何を大切に看護したいか”という看護観を捉え直す良い経験だったと思っています。
※ 看護職者として必要不可欠な知識、技術、そして態度を取り扱う領域
現場復帰を考えた時には急性期時代の経験から、患者さんとじっくりと関われる回復期で働きたいと思いました。訪問看護にも関心があったので、在宅も展開している京都大原記念病院(以下、大原)を選びました。

変化を目の当たりにする喜び
大原に来て、一人ひとりの患者さんに関わることができる時間は圧倒的に長いです。実情としては認知症の方や、状態が安定しない方も多くてバタバタしています。処置に追われて “今日は●●さんに会ったかな?” と思う日もあり、何とかしたいと思うこともあります。それでも、入院時は経管栄養だった患者さんが口から食事をとれるようになったり。車いすの患者さんが自分の足で歩けるようになったり。そうした変化を目の当たりにできるのは嬉しいですね。
患者様が娘様の晴れ舞台に
昨年、全介助状態で入院された50代女性(脳卒中)を担当しました。意識レベルが低くて呼びかければ目を開けるけれど言葉もあまり出ず、かつ経鼻栄養、リクライニング車いすで10~20分首の姿勢を維持することもままならい状態でした。ところがこの方、入院3か月後に娘様の結婚式が決まっていて、どうにか出席したいとおっしゃいました。正直な最初の印象は「難しいかな…。」というもの。ですがチームで話し合い、大切な娘様の晴れ舞台にどんな方法でもいいから出席してほしいと目標に設定しました。
入院中、本当に懸命にリハビリに取り組まれていました。ご主人も指導を熱心に聞いて、自らカメラを買ってリハビリの様子を記録されたり。こちらの介護指導は目いっぱいの時間を使って練習されたり、少し力が入りすぎではないかと心配になるほどでしたね。でも、そのかいあって普通の車いすで2~3時間座れるようになり、食事も口からとれるようにもなりました。結婚式会場の協力も取り付けて、無事に出席の目途が立った時は、みんなして喜びましたね。

迎えた病院から会場に移動する当日、私はご本人のお化粧をお手伝いして、介護指導もほどほどに “何かあった時はいつでも電話してくださいね”と病院の電話番号を記載したカードを手渡して送り出しました。セラピストが安全に過ごすためのガイドをしっかりまとめて手渡してくださっていたのと、ご主人にもリラックスしてほしいなという想いがあったので。ご本人はよく笑う方でしたが「化粧したのは数年ぶりやわ(笑)」って笑いあったのはよく覚えています。
先日、退院後の様子を伺いにご自宅に伺いました。バージンロードで娘様に寄りそい、ご主人と一緒にベールダウンする様子は本当に感動的でした。話を聞くと、相手方のご両親も「大変だったろうに、よく来てくださいました」と喜んでくださったそうです。ご夫婦と結婚式の記録を見ながら、「その場にいることができて本当によかった」と一緒に喜べる再会になりました。

看護師は“調整役”だと思っています。患者さんやご家族の想いや多職種の意見を聞き、調整していくことだろうと。時にはリスクは百も承知のうえで、安全面を考慮してまずはやってみることも大切ではないかと提案することもあります。病院だからできないというのではなく、頭を柔軟にして“どうすればできるか?”を創造することが大切だと思います。
学生時代に “人の心によりそう” という大切さを学びました。患者さんにとって唯一のパーソナルスペースであるベッド周りを丁寧に整えることから、一つひとつ、心に寄りそう看護を目指して行きたいなと思います。そのためにも、職員が働きやすい環境であることは大切ですよね。楽な仕事ではありませんが、楽しさを創造しながら頑張っていきたいなと思います。子供の頃に抱いた“やさしいお姉さん”にはまだ届かないかな(笑)。でも、甘やかすだけでなく、ちゃんと指導もできるやさしさを持ち続けたいです。

【インタビューは動画(約4分)でもご覧いただけます】
【企画・制作】広報コミュニケーション委員会ドキュメンタリーチーム
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