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2027年、新たな挑戦!病院移転がもたらすリハビリテーションの未来

2025年4月、京都大原記念病院に児玉直俊院長(前・京都近衛リハビリテーション病院 院長)、京都近衛リハビリテーション病院に三橋尚志院長(前・京都大原記念病院 副院長)が就任しました。2027年に予定される京都大原記念病院の新築移転に向けた組織再編を機に、京都大原記念病院グループの「リハビリテーションの価値」について語り合いました。

大原ならではのこだわり

児玉 直俊医師(以下、児玉):今回の組織再編は、移転計画を成功させるためのものです。まずは今回のテーマ京都大原記念病院グループの「リハビリテーションの価値」について、長年現場を見てきた三橋先生の考えを聞かせてください。

三橋 尚志医師(以下、三橋):一番の強みは、リハビリテーション・ケアの仕組みがしっかりできていることです。リハビリテーション訓練だけじゃなくて、看護師や介護職の病棟ケアと一緒に提供できる体制になっています。だからこそ、重症の患者様でも受け入れることができているのだと思います。

児玉:多職種で治療方針を話し合うカンファレンスの運営も特徴的ですよね。医師だけでなく、看護師やセラピスト、医療ソーシャルワーカーなどが、専門的視点から意見を出し合う場になっています。

三橋:そうですね。その結果、患者様の退院後の生活を具体的にイメージしながら、最適なリハビリテーションを提案できます。医師だけでなく、患者様、ご家族の参加も大切にしています。リハビリテーションはあくまで手段です。

児玉:単に運動機能や認知機能を良くするのではなく、退院後にどんな生活をするのかを考えながら支援するには、いろんな視点が欠かせませんね。

患者様を支えるリハビリテーションのカタチ

児玉:患者様一人ひとりにしっかり時間をかけるためには、それなりの人員体制が必要です。医療現場の実情としては、目に見えない難しさもありますね。

三橋:特に退院時のカンファレンスは退院後の生活を支えるサービスの担当者も交えて話し合う重要な場です。ただ、病院によっては回復期リハビリテーション病棟以外も運営されていますから、人手不足でなかなか難しいこともあるみたいですね。

児玉:その点、京都大原記念病院はリハビリテーションがそこまで知名度が高くない時期にリハビリテーション専門病院に舵を切った経緯があります。そこを原点とする組織としてのマインドが、カンファレンスのあり方にもつながっていますね。

三橋:そう思います。そこから、京都大原記念病院グループとして医療・介護ネットワークを築きました。在宅医療や介護事業と連携して、退院後の生活を見据えたリハビリテーションを提供できる体制が整っています。

児玉:セラピストもローテーションで病院、在宅、介護事業の現場を経験することで、それぞれの環境を理解しながらリハビリテーションを提供できるんですよね。

三橋:そうですね。それに、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーとの連携もすごく大事です。京都大原記念病院、京都近衛リハビリテーション病院、御所南リハビリテーションクリニック、訪問リハビリテーション事業所、介護事業のスタッフが毎月症例検討や合同ミーティングで顔を合わせて議論する場を持ち、患者様の退院後のサポートを強化しています。こうしたことの積み重ねが一番ですね。

2027年に向けて、理想の病院を作るために

児玉:新しい病院を作るうえで、今、一番力を入れたいのは組織づくりです。組織内の「コミュニケーション」と「マインドセット」をどう強化していくかが鍵になると考えています。

三橋:リハビリテーションは多職種の協業が基本ですから、お互い対等な立場で関われる環境がすごく重要です。医師は他の職種からコミュニケーションを取りやすい存在にならないといけませんね。

児玉:加えて言うなら、新病院は経営層が作るものではなく現場のスタッフが作るものです。だからこそ、価値観や理念を共有して、対話を大切にしていきたいですね。コミュニケーションが活発になると、現場のモチベーションも上がると思います。

三橋:「マインドセット」は具体的にはどんなことを指しますか?

児玉:例えば「月に1回スイーツを食べたい」っていう患者様の希望に対して、「難しい」じゃなくて「どうすれば実現できるか」を考える姿勢を大事にしたいということです。入院生活はどうしても患者様にとって窮屈になりがちです。入院生活の不便・不満・不快を限りなく解消できる生活関連サービスを充実させることで、患者様も安心してリハビリテーションに集中できると考えています。

三橋:「どうすれば実現できるか」という視点は、コロナ禍に様々な制約下で創意工夫してきた学びと言えるかもしれませんね。

児玉: 1日最大3時間のリハビリテーションに主体的に取り組んでいただくためにも、患者様の満足度やモチベーション維持は非常に重要です。長い入院生活で、時には気分転換も必要ですし、いかに快適でストレスの少ない入院生活を送っていただくかを追求していきます。京都近衛リハビリテーション病院で取り組んできた「コンシェルジュサービス(※)」や「取り寄せ食」などの経験も発展させていきます。現場発の創意工夫が基本ですから、私はその後ろ盾になっていくつもりです。
※コンシェルジュサービス:京都近衛リハビリテーション病院では「個室専属」のコンシェルジュを配置。入院生活でのお困りごとを聞き取り個別対応している。

三橋:京都近衛リハビリテーション病院の役割を、高度急性期病院の新たな受け皿として、グループのリハビリテーションの理念を街中で表現することだと考えていました。その意味でこれまでミッションを果たしてきたと捉えています。今後はさらに新病院を見据えて様々な取り組みに挑戦することも重要な役割と捉えて行こうと思います。

児玉:国の統計を見ると、京都市では高齢者の脳卒中や骨折の患者数が増えると予測されています。我々は「リハビリテーション専門病院」として、このニーズにしっかり応えていきたいですね。その意味で、新病院と京都近衛リハビリテーション病院を点で運営するのではなく、2つの病院で約300床の回復期リハビリテーション病棟を一体的に運営して、より広域に地域のリハビリニーズに応える拠点にしたいです。

三橋:そのためには我々だけではなく大学病院、日赤病院などの高度急性期病院や、地域の医療・介護・福祉事業所などの皆さまとも一層連携を深めていくことが大切になります。これからも、大原のリハビリの価値を高めていきましょう!

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