1/1,300の想い

訪問看護のこれからを語る。

“訪問看護のこれから”をテーマに、京都大原記念病院グループが運営する訪問看護ステーションの管理者を中心に、病棟の師長を交えた特別座談会を開催しました。訪問看護に対する想いに加え、今後、病院と在宅の連携がどのようにあるべきか。様々な意見が交わされました。
※ 文章上は病院に所属する看護師を「病棟看護師」、訪問看護に所属する看護師を「訪問看護師」と表記します。

座談会出席者:
訪問看護ステーション宝ヶ池 管理者 志村知子
訪問看護ステーションたかの 管理者 中川小百合
訪問看護ステーション平野  管理者 加賀清美

進行:
訪問看護事業 管理者 富田登志恵
京都大原記念病院 師長 平石ひとみ

 

◆訪問看護との出会い

富田:
本日は皆さんと一緒に、訪問看護のこれからを考えたいと思います。まずは皆さんが訪問看護に興味を持つようになったきっかけを教えてください。

中川:
初めて勤務した病院で医師と地域の患者様を訪ねた経験がとても新鮮で、在宅医療に興味を持ちました。訪問看護に関わるようになると、楽しくって。訪問看護事業所に転職しました。

平石:
たかのにはいつ来てくれたんだっけ?

中川:
子どもの小学校入学を機に非常勤で入職しました。前職の事務所は通勤距離があって、病気がちだった子供の世話もあったので生活とのバランスを考えてのことでしたね。

加賀:
私は学生時代の保健所実習で地域を訪問した経験がとても楽しくて、いずれは訪問看護をしたいと思うようになりました。いきなり一人で訪問する自信もなかったので急性期病院で4年間経験を積んで、そろそろチャレンジしたいと思っていた時に募集を見つけて応募したんです。

富田:
お二人はそれぞれのタイミングで訪問看護に自然と導かれてきたのですね。志村さんは異動で来られて、ある意味で予期しないきっかけですよね。最初の印象はどうでした?

志村:
正直に言うと、「無理だー!」って思いました(笑)。

富田・中川・加賀・平石:
(笑)えっ、そうだったんですか!?

志村:
一人で訪問するなんて不安しかないと思っていました。でも訪問を重ねると、これまで病院で取り組んで来た退院支援の意味や患者様の暮らしに近い距離で関われることの魅力にも気づかされました。「やっぱり看護が好きだな」と実感もできて、今ではよかったと思っていますね。

志村看護師

◆一人で訪問、でも皆で支える

富田:
訪問は基本的に一人で行きますけど、その裏にはいつでも相談できる仲間の存在があるというか…「一人だけど、みんなで支える」みたいな空気があるように思うんです。

富田看護師

加賀:
そうですね。平野でもご利用者の話題になると、みんな一斉に話し始めて止まらないですよ(笑)。「この前こんな表情してた」とか「実はこういう一面もあるよ」って話が次々に出てきて、まるで自分が担当しているかのように語れる。それくらい普段の会話が自然な情報共有になっていて、すごくいい雰囲気です。

中川:
たかのも負けてないですよ。若いスタッフも増えてコミュニケーションに活気があるし、ベテランも負けじと元気ですからね(笑)

志村:
宝ヶ池も同じように、納得いくまでみんなでよく話します。誰かが休む時に訪問をフォローしあえているのも、そういうやり取りがあるからだと思います。みんなの想いが熱い!

 

◆訪問看護のやりがい

富田:
皆さんが、訪問看護をやっていてよかったなと感じるのってどんな瞬間ですか?

中川:
自分の経験と判断で看護ができて、その結果がダイレクトに返ってくる。「ありがとう」や「気持ちよかった」といった言葉を直接聞けた時は特に、「この仕事をしていてよかったな」と感じますよね。病院にいた頃は医師の指示をこなすことが中心で、毎日業務を回すことで精一杯でした。

中川看護師

富田:
看護の醍醐味だと思います。長い間気持ちよくお風呂に入れていなかった方が、私の介助で「今日のお風呂、すごく気持ちよかった」と言ってくださる。そんな小さな変化でも、その人の生活の質が上がる瞬間に立ち会えると本当に嬉しいんです。

中川:
そういう “気づき”ができる看護師って、結果的に「この人じゃないとダメ」って言われたりしますよね。

富田:
ほんとに。やってることはみんな同じように見えるかもしれないけれど、その人にとって“意味がある看護”かどうかの差は、ほんの少しの“気づかい”や、細やかな“配慮”の違いなんだと思います。

加賀:
複数の事業所が入っているご利用者にランク付けされるのはよくありますからね(笑)。「この人はちょっと…」っていうこともあれば、「この人じゃないとダメ」ってなることもあって…。やっぱり、選ばれると自信になります。

平石:
病院の看護では、暮らしを想像する力も大切だと思うんです。ご夫婦そろって認知症でも穏やかに暮らしていることもあります。そんな実例を知っていると、同じようなケースで「犬の散歩に行きたい」と言われた時、単純に「危ないからダメ」とは言えないですよね。リスクは考慮しつつ、どうすれば叶えられるかを一緒に考えるのが私たちの役割だと思っています。

 

◆病院と訪問看護の連携のあり方

富田:
今の話はこれからの病院との連携のあり方を考えるうえですごく大事だと思うんです。訪問看護師って、医療と介護の2つの目線で関われる立場だからこそ、患者様がどうすれば安心して、その人らしく家に帰れるかをもっと一緒に考えていける存在なんじゃないかなって。

平石:
そうそう。一緒に方針を決めていけたら理想ですよね。「ここまでは病院で支えるから、あとはよろしく」みたいなやりとりを入院時点から始める。そうすることで、病棟看護師も自然と退院後の暮らしを想像できるようになるんじゃないかと思うんです。

平石看護師(写真左)

富田:
コロナ前は、訪問看護師が病棟に行って直接話す機会はあったんです。新病院も見据えて、仕組みとして再開できないかなと思います。

平石:
ぜひ!このような検討が一つのグループでできることは強みですね。他に強みに感じる部分はありますか?

加賀:
平野は居宅介護支援やデイサービスも併設されているから、連携がしやすい。デイサービスでは、ご利用者が普段はどんな表情なのか…そんな小さな情報も得られて看護にすごく活きてきます。

志村:
私の場合は、もとは病院にいたので何かあった時に頼りやすかったりします。それと、回復期リハビリテーション病棟協会の認定看護師資格を取ったので、その視点を活かして大原ならではの看護を考えて行きたいと思っています。

 

◆若手育成と未来への期待

富田:
最近は、若い看護師さんもふえましたね。ベテランじゃないと難しいと思われがちな訪問看護ですが、様子はいかがですか?

中川:
そうですね、入ってきた当初は看護師3年目くらいのスタッフだったんですけど、今ではもうオンコール(※)も任せられるようになっていますよ。すごくしっかりしていて、頼もしい存在です。

加賀:
訪問看護は生活全体を支える仕事なので、看護技術だけでなく“人生経験”も大切なんです。でもそれは簡単に積めるものではないので、若い人たちがいろんなケースに安心して飛び込める環境が大切だと思っています。何かあったら相談できて、いつでもお互いにフォローができる。そのための「誰とでも、なんでも話せる」関係です。

加賀看護師

平石:
こういう看護がしたいと語れる先輩の存在も大切だと思います。その姿を見て学べるからこそ、若手も成長できるんだと思います。

※訪問予定がない日や夜間などにご利用者やご家族からかかってくる緊急の電話への対応

 

◆訪問看護の醍醐味を次世代へ

富田:
“訪問看護師さんって、みんなキラキラしてますよね!”って、時々そんなふうに言っていただくことがあるんです。すごく嬉しい言葉ですよね。きっとそれは、自分で考えて、自分で動いて、その看護の結果がご利用者やご家族にどう届いたかを、直接感じられるからこその輝きなんだろうなって思うんです。

一同:
うんうん、ほんとに。

富田:
これからも、みんなで一緒に、力を合わせて頑張っていきましょう!

関連記事

2023年12月22日
「小さな“できた”を共に喜び応援する。お困りごとから紐解く リハビリテーション医療」児玉万実|御所南リハビリテーションクリニック 院長
2021年8月26日
高齢社会に見合う医療を – 創立40周年に思う – |児玉博行|京都大原記念病院グループ代表
2021年6月14日
「リハビリテーションのその先へ」児玉 万実|御所南リハビリテーションクリニック 院長