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永年勤続!清水紀美子看護職(30周年)、鈴山博司医師(20周年)の想いをインタビューしました!

京都大原記念病院グループ(以下、グループ)38年の歴史のなかで、長年「在宅医療」を支える清水紀美子看護職が勤続30周年、鈴山博司医師が勤続20周年を迎えました。今もなお第一線で活躍する2人に話を聞きました。

■在宅医療、日々の診療での心がけ

-2人が在宅医療に関わり出された頃のお話や、在宅医療ならではの魅力や難しさなどがあればお聞かせください。
清水 大原在宅診療所(以下、診療所)に異動になった時、あまり「在宅医療」のイメージがありませんでした。病院や施設だと、当然整った環境で診察しますけど、在宅ではその時にあるものでなんとかしないといけません。最初は想像つかなかったですけど、周囲に相談したり、患者さんの様子から「そういう風にすればいいのか」と気づくこともたくさんありました。訪問に出させてもらって独居で寝たきりと言う方と出会って、(その生活ぶりに)こんな風に暮らしているのかととても驚きましたよ。

独居の方や、ご夫婦ともに認知症という状態で暮らされていても、自宅にあるものやうまくサービスも使いながらなんとか工夫して生活される方もいます。そうした方々が医療面で困ることがないように、訪問するのが私達と思っていますし、毎回、次の診察の時も元気に会いたいなと思って訪問しています。そんな想いでいると、患者さんの元気な顔を見るとほっとするし、よかったなぁと思いますよ。


清水看護職

鈴山 難しさという意味では、やはり病院・施設は、意向を聞きながらではあるけど、施設側が主体になる。ただこれが自宅になると家族、本人主体と変わるので、その辺りのやり方には難しさはある。

あと、在宅に関わり出して思ったことだけれど、京都という都会で一人暮らしなど孤立した人は思ったよりも多いんだなということは思った。もしかすると、田舎なら隣近所が関与することもあるかもしれないけれど、都会だけに隣近所との付き合いも少ないようでそういう意味では公的に関わっていることは必要なんだろうなと思ったなあ。

-いろんな生活の中に入り込む日々の診療のなかで、2人が心がけておられることはありますか?

清水 私達は訪問看護ではなく、訪問診療なので、基本的に患者さんは先生の診察を待っておられると思っています。(看護職としては)診察に伺った時に先生方が診やすいようにとか、先生と患者さん、家族さんが会話しやすいように声かけをして、そういう空気をつくれるようにしているつもりです。

鈴山 訪問診療だからということではなく、病院で診るのと同じようなつもりで診ている。ただ、医師としてどうこうよりも、まずは自分が(体調不良などで)休まないというのが大前提に心がけていること。それと、一人一人平等にという気持ちで対応している。

清水 昨年に、桑田克也先生が来られるまで一般在宅の患者さんの時間外対応はほぼ鈴山先生お一人でしたしね。それにしても、先生のしんどそうな姿を見るのは花粉の時期だけですよ(笑)

鈴山 基本は風邪をひかないこと。そのために抵抗力、体力をつけておくことは大切だと思う。あまり潔癖になりすぎず、なんでも食べて、風邪を引かないように。


鈴山博司医師

あと、在宅医療は、基本的に病気を治す「治療」というよりは、現状を「維持」していくためのものというのが僕の考え。そのなかで、想いとしては元気になってもらいたい。病気を治すというよりは、(病気と付き合いながらも)元気に生活してもらえるようにという意味合いで声かけなどは心がけて診察している。

-ちなみに、鈴山先生が訪問の時に白衣を着ておられないというのには何か理由があるんでしょうか?

鈴山 難しい話ではないよ。白衣で外を歩くのが嫌いということもあるんだけど。一番の理由は、白衣の人が家に入る様子を他の人に見られたくないという意識の家庭もあるんじゃないかな?と思うから、それが分からないようにしたいということだな。ただ、訪問の時は人と接する訳だからネクタイをして、失礼のないような服装で訪問するようにしている。だから、決して私服ではないよ(笑)

白衣は「医師」という職業を表している。訪問診療の場面では、それを表す必要はないと思っている。病院のなかでは様々な職種の中で、医師ということを示す必要もあると思うけれど、訪問診療はそもそも「医師が行く」ものだから。まあ、でも一番はやっぱり白衣の人間が家に入ることで、家の中の事情が他の人に知られることを気にする方もいるのではないかな?ということが白衣を着ない一番の理由だね。

清水 訪問診療に限らず、訪問系のサービスはそうかもしれませんね。近所に知られたくない人もいるでしょうしね。

鈴山 救急車を呼んだりしても気にする人もいるだろう。だから心がける。でも認知症の方のところで訪問するという場面は白衣の方が効果的かもしれない。「白衣=医師」と伝わって、やりやすくなるかもしれないけどね。

-これまでのご経験で、印象に残っているケースなどはありますか?

鈴山 個別ケースというよりも、やはり大変(重度)な方が印象に残る。

清水 患者さんの診察はもちろん、家族さんの相談に乗ったり、指導したりすることもあります。家族のスタンスはいろいろですけど、ここまでがんばるんだな、と思うことは多々あります。

鈴山 点滴、中心静脈栄養を自分でする人もいれば、以前にある難病患者で、人工呼吸器、胃ろう、バルーンカテーテルをしているような状態でご飯を食べられたり、人工呼吸器をつけて車を運転されていた。最後は寝たきりになってしまったけれど、そんな風に自分でがんばられたり、家族ががんばられたりまあ総じてやはり大変(重度)な患者さんが印象に残りやすいかなと思う。

-世間で在宅医療への期待値は高まっているように思います。現場でも同様の感覚でしょうか?

清水 今は病院から自宅へという流れになっていると思います。患者さん本人は家に帰りたいと言います。それを家族が受け入れられるかどうかというのも大切です。病院からの退院時の指導やその後の在宅で関わる訪問診療と、そこの連携はできているように感じるし、増えて来ました。そのあたりは世間的にもニュース等で流れるようになってきて世の中の意識も変わってきているのではないかな?と思います。

鈴山 時代として、高齢者が増えてきている。目の前では診療所の登録患者数も増えている。施設も一定飽和状態なのかなと思うと、行き場が無くて自宅に帰る、家に帰らざるを得ないという方もいるのはいると思う。そのように(制度上)誘導されている。

患者さん本人は自宅を望むけど、家族さんの負担も現実としてある。今、老健も診ているけれど、家族負担という意味では施設に診てもらっているほうがいいんだろうとは思う。(施設で診きれなければ)これから団塊の世代までは在宅は増え続ける。そこは我々の出番になってくるのだろうということは常々感じている。

と言っても、単純にマンパワーが変わらず、今後、人数が増えて行けば一人一人の診察時間をなるべく短くするのか、なんとかスタッフを増やすのか何らか工夫しなくちゃならない。(在宅医療は)一人の患者をずっと、全身を診て行く。そのためには医師にも一定の経験は必要だと思う。そこそこ経験を積んだ医師が中心を担っていくべきだろうね。

■いつまでも期待に応えられる診療所を目指して

-診療所として掲げる「住み慣れたご自宅で安心の療養生活をー。」との理念を今後も継続していくために課題と思っていることはありますか?

清水 夜間の電話も多いですが、直接先生方が応えてくれる。その意味では患者さん、家族さん、やり取りするサービス事業所も安心してくださっているのではないかなと思う。訪問予定のやり取りなど間接的な部分も比較的細かく対応できているんじゃないかなとは思いますけどね。

鈴山 診療所として経験を積んできているので、ある程度、システム的にできているのかもしれないね。なるほどな。

1年365日、24時間対応していかなければならない。その意味で体制はちゃんと整えておかなければならない。昨年から桑田先生が来てくれているが、千丸博司先生にしても、僕にしても年齢を考えると、今後の後継者をどのように作っていくかなというのは長らくの課題だね。

-最後にこの記事をご覧いただいている方に何かメッセージがあればお願いします。

清水 面談の時にも必ず言うのが、365日なにかあっても先生と連絡をとれる体制にあるということ。困ったことがあればいつでも相談してください。

鈴山 日々、患者さんからいろんな電話がかかって来るが「相談なんですが」と仰ることもある。当然それに対して答えるわけだけど、後から聞くとじつは相談と言いつつも、往診を希望されていたというケースもよくある。費用もかかるので僕たちは往診してほしいという希望を受けて往診する。もしかすると遠慮させてしまっているのかもしれないけれど、こちらもそのつもりで待機しているのでぜひ遠慮なくはっきりと意思表示をしてもらって、大いに頼ってほしいね。

-鈴山先生、清水さん、ありがとうございました。

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