自宅での看取り。家族を看取るために必要なことやできることは?
こんにちは、京都大原記念病院グループ往診専門診療所(大原在宅診療所)です。
病院や施設で長く過ごしていた方でも、最期は慣れ親しんだ我が家に帰りたい、自宅で家族に看取られて旅立ちたいと考える方は少なくありません。
今回はそんな自宅での看取りについてのお話です。
そもそも看取りとは何か?日本の実際はどんな状況になっているのか?
家族を自宅で看取るために必要なプロセスや準備すべきと考えられることをまとめて、ご紹介します。
【この記事の要点】
1.看取りとは、終末期を迎えた方のそばで世話をし、最期を見届けること
2.人生の最終段階をどう過ごしたいかを、本人、家族で “意思共有”し、医師や看護師等の医療従事者と十分に話し合い “意思決定”するのが大切
3.自宅での看取りを多くが希望するが、実際は医療機関等で看取られるケースが80%以上
4.できれば健康なうちから相談すること
そもそも看取りとは?
看取りとは、終末期を迎えた方のそばで世話をし、最期を見届けること、と言えます。
もともとは「 病人のそばにいて世話をする 」「 看病する 」というような、行為そのものを表す言葉でしたが、最近では人生の最期における看取りを持って、単に「 看取り 」と言い表すことが多くなっています。
終末期にある方に対して、身体的・精神的な負担や苦痛を排除し、本人が穏やかな最期を迎えられるような援助を行います。
( ただし、具体的な診療やサポートの方針は医療機関等によって様々な考え方があります )
尊厳に配慮しながら、本人の意思を尊重した生活を行えるように可能な限り環境を整え、身の回りの世話をし、その時が来たら最期を見届けます。
医療技術の進歩や制度等の充実により、高齢者の生活の形にもさまざまな選択肢ができました。
しかし、内閣府が行った調査「 平成29年版高齢社会白書 」よると、「治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいか」という質問に対して、自宅と答える方が半数以上で一番多く、また延命治療についても90%以上の方が「延命のみを目的とした医療は行わず、自然にまかせてほしい」と答えています。
人生の最期は住み慣れた自宅で家族に看取られて旅立ちたいと考える方が多いのが事実です。
自宅で看取りをするために必要なこと
自宅で看取るか、看取られたいか?
重要な点となりますが、その前に 「 人生の最終段階をどのように過ごしたいか 」について、意思を共有し、意思を決定していくことが大切です。
特に、具体的に人生の最終段階における医療やケアをどうするか?を決める時には、本人や家族だけで決めてしまわず、医師や看護師など、医療従事者と十分に話し合いましょう。
医師から病状の説明を聞き、適切に状態を把握したうえで、どうするかを検討し意思決定していくことが大切です。( 病態によって医療内容の決定が困難なケースや、家族の間で意思がまとまらず専門家の複数の専門家で構成する委員会を設置して決めて行く場合などもあります )
そのうえで「 最期の時間を自宅で過ごし家族に看取られたい 」という患者様本人の意思がある時は、まず「最期の時間を一緒に過ごして自宅で看取りたい」という意思を家族間でも共有しましょう。
医師などの医療従事者と十分に相談したうえで適切な医療、介護サービスの体制を整えることが望ましいと思います。
具体的にどのようなサービスを利用するかについては、担当ケアマネジャーや、もし入院中といった場合にはソーシャルワーカーに相談してみましょう。
看取りにおける医療・介護体制は24時間・365日体制となります。
生活環境面ではできるだけこれまでと変わらない穏やかな生活ができるように環境を整え、家族や親しい人とゆっくりと過ごせる時間を作ったり、好きな音楽をかけたり、思い出の品物をそばに置いてあげたりしても良いですね。
訪問介護や訪問看護の体制を整え充実したサポート環境があったとしても、毎日の介護や最期の時を看取るのは家族です。
大切な家族の最期の時間を充実したものにできるように、またその時が来た時には誰に連絡を取るか、どのような言葉をかけるかなどの心構えも必要です。
自宅での看取りを望まれる方は多いが、 果たして実情は?
世の中には自宅での看取りを望まれる方は、大変多くいらっしゃいますが、必ずしも実情はそうなっていません。
約60年前、1975年頃まで、日本では自宅での看取りが最も多くを占めていました。
しかし、戦後、政策の流れもあり医療機関が増加し、また日々の医療技術の進歩により構造は大きく変わりました。
現在は医療機関での死亡だけで約75%、介護施設や高齢者住宅で看取られるケースも少しずつ増え、これらを合わせると80%以上を占めています。
多くの人が「自宅で最期を迎えたい」と希望がありながら実態は、自宅で看取られるケースは全体の約15%にとどまっているのが実際です。
核家族化などの家族構成の変化も要因と考えられます。
しかしそれだけでなく、自宅での看取りは看取りを行う家族に介護の身体的・精神的な負担がかかるのも事実です。
また状態によっては医療的ケアを家族がしなくてはいけなかったり、急変時のドクターコールをしたりと通常の介護とは別の大変さもあります。
こうした過程で本人の意思が変化したり、ご家族が入院での延命治療などを希望された結果、そこで最期を迎えるケースも多くあります。
本人の意思以外が影響してくることも、このような「 希望 」と「 現実 」の乖離を産み出す要因の一つかもしれません。
家族の看取りで後悔しないためには
医療技術が進歩し、高度な治療や延命措置などの選択肢もたくさんありますが、誰しも死は避けられません。そしていつやって来るかは専門家でも分かりません。
「できるだけ長く生きてほしい」
「過度な延命はせず、尊厳を保ったまま最期を迎えさせたい」
どちらが正しいということはありません。
本人の意志はもちろん、看取る家族も気持ちの整理と共有が必要です。
そして医師等、関わる医療従事者と十分に話し合うことが大切です。
誰にでも必ず訪れる人生の最後に対して、その時が来たらどのように過ごしたいか、どのようにサポートしていけるのか、健康なうちから家族で話し合いをして確認しておくのが理想ですね。
まとめ
最期の時を自宅で家族に看取られて旅立ちたいと考えている方は多いが、様々な社会的背景で実際に自宅で看取られるケースは全体の約15%程度にとどまります。
そこには、本人と家族の意思の乖離も要因の一つと考えられます。
最期の過ごし方については、しっかりと相談し意思を共有すること。
それを踏まえて適切なサービスが利用できるようかかりつけ医師や担当ソーシャルワーカー、担当ケアマネジャーなどに相談しましょう。
できることであれば、健康なうちからこうしたテーマについて話し合う機会を持つことも大切と考えられます。
私たち京都大原記念病院グループ 往診専門診療所(大原在宅診療所)も24時間365日、地域の方々の自宅療養をお手伝いいたします。
看取りの意思決定は、当診療所でも、状態に応じて医師が病状を説明し、そのうえで、どうするかご本人、ご家族と相談して決定されます。そのあとで、ケアマネジャーや訪問看護等の関係機関との話し合いをして、支援体制を整えていきます。
計画的にお宅に伺う訪問診療だけでなく、必要に応じて臨時で診察に伺う往診、看取りも含めて対応していますので、気軽にお問い合わせください。
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