【後編】 京都シニア大学 熊谷篤理事長にお話を伺いました。
2019年4月京都大原記念病院グループと京都シニア大学が連携し「ウェルネス部」を創設しました。毎週木曜日、55歳以上のアクティブなシニアの学生16名とともに「心と身体の健康」をテーマにさまざまな活動を重ねています。そこで、今回は同大学 熊谷篤 理事長に同大学の成り立ちや今後の展望、ウェルネス部に寄せる期待などをテーマにお話を伺った内容を二部構成でご紹介します。第二部のテーマは「京都シニア大学ウェルネス部」について。ぜひご覧ください。
- (前編「京都シニア大学の成り立ちや魅力」はこちら)
手探りながらも落ち着きつつあるウェルネス部、大学の新たな魅力へ
2019年4月 京都大原記念病院グループと連携し、大学に「ウェルネス部」が選択科目として誕生した。もともと大学の新たな魅力付けとして新しい部を創設したいというところから検討が始まった。かねてから「健康」というキーワードは求められるとは思っていた。学びを通じて健康に関する知識を身に付け、同時に学生が心と身体の健康を実現してもらえる場を目指しウェルネス部の創部が決定された。
連携先として京都大原記念病院グループに依頼したのは「リハビリテーション医療」を核としていることを知ったから。リハビリは運動などの活動も通じて病気の後遺症等の克服を目指すものというイメージがあった。病気の原因を知ることや治療、予防が最も重要であるが、そういった活動もうまくウェルネス部の活動にマッチするのではないかと考えた。
また、病院でありながら「健康増進」を志した取り組みなども様々検討していたことが決め手となった。熊谷理事長自身はこれまで「病院は、病気になった時以外は基本的に用事がない」という印象しかなく、健康な人を増やすことは病院の仕事を減らしてしまうのでは、と驚いたそうだ。とは言え、健康でいきいきと健やかに活動される方が増え、病院に縁のない方を増やすことは大学にとっても喜ばしい。そういうところに、医療の根拠をもって病院が協力してくれることはとても良いことと考えて依頼することにした。
新しい部ができたのは実におよそ20年ぶりのこと。当初、手探り状態であることはそばでも感じていた。しかし最近は、部員16名の表情からは楽しんでおられることが伺えるようになってきたし、実際にそのような声も聴こえている。外部からの新規入学の問い合わせの他、過去に学校を辞められた方からも「どんなことをやってるの?」と再入学を検討する問い合わせを受けるなど目に見える反響も出だした状況だ。
病院のイメージ変化。頭(知識)、身体、心が三位一体で豊かになる連携を目指す。
実際に何度か参加された感想は「医療などに関する情報を何気なく得るものではなく、ウェルネス部の内容は、新しい知識を得られることがおもしろい。イメージとしては“病院に行かなくなれる授業”とうようなイメージを抱いている」。先の話にもあったが、行政や大学などが実施する高齢者向けの学習教室は増加している。とは言え「ここまでしっかりと医療機関とタイアップしている生涯学習の学校はまだないと自負している」とのこと。ウェルネスという言葉が馴染みになっていることも追い風に、シニアにとってウェルネス分野を学ぶ中心的存在となることを目指して、連携を図っていきたいとの期待を示している。
一連の連携を通じて、熊谷理事長の「病院」へのイメージは様変わりした。「しんどくなってからしか行くことがない。基本的に行きたくないのが常なイメージ。しかし、連携を通じて“健康になるために関わる存在”というイメージに変化している」。「通うことで心も身体も健康になる場所」として、ウェルネス分野が魅力の高齢者向けの学校作りをしていきたいとのことだ。
大学創立時の「教育を通じて、社会全体をより豊かにする」という願いは46年目を迎える現在も根底は変わらない。付け加えるとしたら「健康」というキーワード。学びで知識を得て、頭を健康にするだけでなく、身体や心も健康であること。頭、身体、心が三位一体でいろんな栄養を吸収し、学生も、社会も、大学も、ともに豊かになれるような場を目指していく。そのためにもこの連携をより一層深めていきたいと、現在の展望を聞かせてくれた。
- (前編「京都シニア大学の成り立ちや魅力」はこちら)
関連記事
- 2017年3月14日
- 院内研修会「リハビリテーション栄養-In Bodyの活用編-」
- 2020年12月11日
- 【シャトルバス】12/20「全国高校駅伝」に伴う一部運休について
- 2021年5月01日
- 広報誌orinas vol.2 「医療連携室の活動から見えてくるもの」