訪問診療(往診)の費用は?費用の仕組みをご紹介
こんにちは、京都大原記念病院グループ 大原在宅診療所(往診専門診療所)です。
「訪問診療を利用したいけど、どのくらい費用がかかるのか不安…」
そんな心配をされている方は少なくないはずです。
今回は往診や訪問診療にかかる費用をテーマにまとめます。
全体的に細かな内容となりますが、大きくは
① 費用の仕組み
② 費用の内容
③ 事例のご紹介
の3つに分けてご紹介します。
なお、この記事は2019年4月現在の情報です。
今年10月には消費増税に伴い改正される予定ですので、ご注意ください。
【この記事の要点】
1.【Part1】費用は「基本診療費」「追加加算される診療費」「医療費負担割合」をもとに決まります。
2.【Part2】費用は医療保険により決まっているものの、様々な条件で変動します。どんな費用があるかを知って、具体的にはご相談を。
3.【Part3】当診療所がご自宅でお1人を診察させていただく場合の参考事例をご紹介
4.この記事は2019年4月時点の情報です。2019年10月に消費増税に伴い、改訂が予定されています。
【part1】費用の仕組み
往診や訪問診療の費用は、
基本診療費 + 追加加算される診療費 × 医療費負担割合
訪問診療とは、通院が困難な患者様の自宅に医師や看護師が定期的に訪れて診察などを行うものです。
基本的な診療として、患者様個別に作成する在宅療養計画に基づき、定期的に訪問して診療を行い総合的な医学管理を行います。
追加的に患者様や家族様などから求めを受け医師が必要と判断した場合に訪問する往診や、治療上必要とされる注射、点滴、各種検査などをします。
このように基本部分と、必要に応じて対応する追加部分とに分かれ、費用も「基本診療費」と、実施された時にその分だけ発生する「追加加算される診療費」と大きく2つに分かれます。この合計に医療費の負担割合が考慮されて費用が決定します。
構造はこのようにシンプルです。
しかし、注意が必要なのは、
・生活場所が自宅か施設か
・訪問日や訪問時間(夜間・深夜等)
・状態やご希望、診療方針等による、追加対応の違い
などの個別的な要素によって金額がかなり変わるという点です。
そのため、一概に往診や訪問診療を利用する時に「 ●●●●円くらいかかる 」とお伝えすることはなかなか難しいです。
基本診療費と、追加加算される診療費について少し堀り下げた後、具体的な事例を用いてご紹介します。
【part2】費用の内容
個別の様々な条件により変わる診療費
主な費用の内容を知って、具体的にはご相談を。
この節は少し細かい内容となります。
早速具体的な事例を見たい!という方は次の節へお進みください
またこの先一部の項目で「●●点」という単位が出て来ますが、これは診療報酬点数であり、1点10円となります。
どの項目がいくらかかるというよりは、どのような診療があった時に追加で費用がかかるか?という目線で参考にしていただければと思います。
基本診療費
・在宅時医学総合管理料
自宅で療養生活を送られる通院困難な患者様に、個別で総合的な在宅療養計画を作成し、定期的に訪問して診療を行い、総合的な医学管理を行うことに対する費用です。毎月1回発生します。定期診療に伴う処方箋料はここに含まれます。
・施設入居時等医学総合管理料
在宅時医学総合管理料と考え方は同じです。こちらは介護施設等※1で生活されている方などに訪問する場合に適用されます。
※1:介護施設等とは以下を指します
ア 次に掲げるいずれかの施設において療養を行っている患者
(イ) 養護老人ホーム
(ロ) 軽費老人ホーム
「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」(平成20 年厚生労働省令第107 号)
附則第2条第1号に規定する軽費老人ホームA型に限る。
(ハ) 特別養護老人ホーム
(ニ) 有料老人ホーム
(ホ) 高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13 年4月6日法律第26 号)
第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅
(へ) 認知症対応型共同生活介護事業所
イ 次に掲げるいずれかのサービスを受けている患者
(イ) 短期入所生活介護
(ロ) 介護予防短期入所生活介護
・訪問診療料 833点/回~
自宅で療養生活を送られる通院困難な患者様に定期的に訪問して診療を行った場合の1回あたりの費用。在宅への訪問時と、施設への訪問時で費用は異なる。訪問回数は診療計画により定められるが、およそ月2回~4回程度。
基本診療費は、「在宅時医学総合管理料」もしくは「施設入居時等医学総合管理料」と、「訪問診療料×回数」の合計となります。
それぞれの金額はご状態や、どのような医療機関が対応するか、同じ建物の中で1人の診察か2人以上かなど様々な条件で変わります。
個々のパターンはとても多くてご紹介しきれないので、参考として当診療所(在宅療養支援診療所)がご自宅でお1人を診察させていただく場合の基本診療費のみの負担額※2をご紹介しますと以下の表の通りとなります。
※2:在宅時医学総合管理料 3,700点 + 訪問診療料833点 × 訪問回数 + 在宅療養実績加算300点 × 10円/点 × 医療負担割合
これに加えて、以下のような追加加算される診療費に該当する項目が発生した場合は追加費用がかかります。
追加加算される診療費
前節でもご紹介した通り、基本診療費に追加加算される費用となります。
・往診料 720点~
患者様、または家族様などから電話で定期診療以外に臨時で往診を希望され、医師が必要と判断し訪問した場合にかかります。
医療機関の種類(有床・無床)や、対応内容、往診日(日曜日・祝日など)、往診時間(夜間・深夜)によって点数が変わり、交通費の実費分がかかります。
・訪問看護料 580点~
患者様、または家族様などから電話等で定期診療以外に臨時で往診を希望され、医師が必要と判断し看護師に訪問した場合にかかります。
対応者(看護師、准看護師、保健師)や、対応内容、訪問日(日曜日・祝日など)、訪問時間(夜間・深夜)によって点数が変わり、交通費の実費分がかかります。
・電話再診料 72点
患者様、または家族様などが電話等で相談し、治療上で必要な指示やアドバイスをした場合にかかります。
これ以降は、実施内容により点数が大きく変わるので項目のみご紹介します。
・検査料
治療上必要と判断された検査を実施した場合にかかります
※費用は内容により異なります
※当診療所では、採血検査、便検査、尿検査、痰検査、心電図検査などを行っています。
・注射、点滴
治療上必要と判断された注射,点滴を実施した場合にかかります
※費用は内容により異なります
・処置
創傷処置、尿道カテーテル交換、胃ろう交換などを実施した場合にかかります
※費用は内容により異なります
・在宅療養指導管理料
自己注射が必要な方や、在宅で透析をされている方、在宅酸素療法を行っている方などが自宅での療養生活の方法や注意点、緊急時の対応方法等について指導した場合に月1回発生します。
※厳密には在宅●●指導管理料、といった形で内容により名称が異なります。
・薬代
処方された薬代です。費用は薬局への支払いとなります
・文書作成料
必要に応じて作成する診断書や各種証明書等の作成費用で、実費と消費税が発生します。
以上が、追加費用がかかる主な診療内容となります。
もし利用を検討されていて、およその費用を知りたい場合は「このような項目が発生した時に費用が追加でかかる」と理解されたうえで、ご自身の希望を整理して直接医療機関や担当のケアマネジャーなどにご相談されるのもよいと思います。
これまでご紹介した往診や訪問診療の費用は医療保険により決まっています。
しかし、どのような医療機関(診療実績や体制等)が実施するか、患者様のご状態や生活状況など様々な条件によりこれらの項目に「加算」がつくなどして、金額が変わってきます。
そのため具体的な金額をお伝えすることは難しいのですが、おおよその概算は教えてくださるはずです。
また、介護保険サービスを利用されている方は、訪問診療や往診をしているが療養生活上で必要な指導をしたり、またその医師の指示に基づき、管理栄養士や薬剤師等が訪問して健康管理や相談・指導を行う「居宅療養管理指導」も発生しますのでご注意ください。
居宅療養管理指導については、こちらでもまとめていますので、気になる方はご覧ください。
⇒ 往診は介護保険?介護保険が適応になる居宅療養管理指導とは
【part3】事例のご紹介
最後に事例を少しご紹介
当診療所での想定
ここから先の事例は、基本的に「 当診療所がご自宅でお1人を診察させていただく場合 」を基本の条件として、事例をご紹介します。
再掲となりますが、基本診療費のみの負担額は以下の表の通りです。
例えば、月2回/1割負担でご利用されている場合は、基本診療料は5,666円(5,666点)※3となります。
※3:在宅時医学総合管理料 3,700点 + 訪問診療料833点 × 2回 +在宅療養実績加算300点 × 10円 × 医療負担割合1割
この方に追加で以下のような診療が行われた場合を想定してみます。
この方の追加加算される診療費の合計は3,786点となりました。
1点は10円となります。この方の医療費負担割合は1割という想定なので、
3,786点 × 10円 × 1割 = 3,786円
この金額が追加費用となります。
最終的な月額費用は、(基本診療費 5,666点 + 追加加算される診療費 3,786点 )×10円 × 1割 = 合計9,452円 + 交通費ということになります。
繰り返しになりますが、これはあくまで当診療所がご自宅でお1人を診察させていただく場合を想定した参考金額です。
各診療費用については、生活場所、同じ建物内で診療する人数、医療機関の形態や診療実績、 往診等の時間帯など、細かな基準によって費用は変動します。
ご利用を検討されている方で、具体的に概算費用を知りたい場合は、診療に関する希望を少し整理して、ぜひ医療機関の担当相談員かケアマネジャーにご相談なさってください。
実際には、訪問診療についてどうするか?だけでなく、在宅生活を送るにあたって他の介護保険サービスなども考慮しながら全体で考えることが大切になります。
またこの記事の情報は2019年4月現在のものであり、2019年10月の消費増税に伴い改訂されます。ご注意ください。
まとめ
・往診・訪問診療は、定期的な訪問とそれに基づく総合的な医学管理などの基本診療、及びご要望や必要に応じて発生する往診や検査など追加実施する診療に分かれる。費用も基本診療費と、追加加算される診療費、医療費負担割合で決まる。
・基本診療費は生活の拠点により変わる。追加部分はご状態や希望などの個別的要因、医療機関の種類や曜日、時間帯など諸条件により金額が異なる。概算を知りたい場合は、ご自身の希望を整理して一度専門家に相談してみましょう。
京都大原記念病院グループ 大原在宅診療所(往診専門診療所)は24時間365日、地域の方々の自宅療養をお手伝いいたします。
計画的にお宅に伺う訪問診療だけでなく、必要に応じて臨時で診察に伺う往診にも対応しています。また往診や訪問診療がどのようなものか、費用はどの程度かかるのか?などのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
関連記事
- 2018年10月25日
- 訪問診療と往診の違いはここ!わかりやすく解説
- 2019年9月30日
- 訪問診療の交通費、医療費控除になる?対象範囲や手続きについても
- 2019年6月13日
- ターミナルケアとはどんな医療なの?