京都大原リクルートブログ

2017/10/06

介護で重要な「水分補給」のポイントとは?

介護職

こんにちは!京都大原記念病院です。

介護の現場では「水分補給はこまめに行うこと!」とよく言われますよね。
自分で水分補給できる方、声掛けが必要な方、寝たきりの方、意思疎通が難しい方など、介護の現場にはさまざまな状態の方がいらっしゃいます。

なぜ高齢者にとって水分を補給することが重要なのでしょうか?どのくらいの水分量を、どのように補給したら良いのでしょうか?

今回は介護における水分補給についてご紹介します。

 

介護における水分補給の重要性

高齢者は若年層と比較し、意識して水分を摂るように努める必要があります。
理由として次のような項目があげられます。

体内に水分を留める機能の低下

人体に占める水分量の割合は小児で70~80%、成人で60%、高齢者で50%と言われています。

高齢者は水分を蓄えるための筋肉が減少し、体の中の水分量が少なくなるため脱水症になりやすいのです。

 

水分の排出量増加(頻尿)

高齢者は水分を蓄える機能が低下する上、水分調整において重要な腎臓の機能が低下し、尿量が多くなります。
降圧剤(血圧降下剤)の利尿作用で尿量が多くなる方もいます。

頻尿になると、夜間のトイレを気にして水分摂取を制限する高齢者が増えてきます。

水分の排出量は多くなるのに、摂取量は少なくなってしまうわけです。

 

のどの渇きを感じる機能の鈍化

高齢になると体の感覚が鈍くなり、喉の渇きを感じる「口渇中枢」も減退してしまいます。
口渇中枢の機能低下によって水分が必要でも本人が気づかず、水分補給が遅れてしまうケースがあります。

その他にも、食欲不振や嚥下(えんげ=飲みこみ)障害などによって水分が摂りにくくなります。

高齢者は脱水症状を起こしやすい状態にあり、いったん脱水症状を起こせば回復までに時間を要するほか、命に関わることもあります。
本人から要求がなくても介護人が注意して、こまめに水分補給を促す必要があります。

 

一日に必要な水分摂取量と見分け方

一日にどのくらい水分補給をしたら良いのでしょうか?

人が一日に必要な水分量は、2~2.5リットルと言われています。
そのうち半分は毎日の食事やフルーツなどの補食を摂ることでまかなえるのですが、残りの半分は水分で補給しなくてはなりません。

漠然と補給介助をしているといくら補給できたのか分からなくなりますので、介助するごとに記録を残しましょう。

 

あらかじめ一日に補給する時間と量を決めておくのも良いでしょう。
(例えば起床後、毎食後、おやつ、入浴前後、寝る前にコップ1杯ずつなど)

気候や体調によっても必要な水分量は変わってくるので、日によって調節することも必要です。

 

被介助者の水分量が適切かどうかは、相手の心身に次のような特徴がないか観察し判断するとよいでしょう。
水分が不足しているとき、摂り過ぎているときには次のような症状が見られます。

水分が不足しているとき

<軽度>

・口の渇き
・舌、唇、皮膚の乾燥
・尿量減少
・ぼんやりする
・めまい

<中度>

・頭痛
・全身脱力感、倦怠感
・手足のふるえ
・ふらつき
・発熱、皮膚の紅潮
・血圧低下

<重度>

・幻覚、昏睡、錯覚などの精神症状
・痙攣
・呼吸困難
・意識障害
・目のくぼみ

 

水分を摂り過ぎているとき

・むくみ
・下痢
・動悸、息切れ
・頻尿
・血圧上昇
・めまい
・倦怠感
・不整脈
・冷え
・体重増加

 

介護における水分補給の注意点

前述した一日に必要な水分量の他にも、介護における水分補給の注意点があります。
安全で効果的に水分補給するための注意点を3点ご紹介します。

 

1  水分補給の体勢

高齢者の補給介助をする際は、最も飲みやすい「前傾姿勢」を意識しましょう。
のけぞった姿勢で水分を摂ってしまうと、自分で飲み込む意識のないままに流れ込むので、誤って気管に入ってしまう可能性があります。

これは食事を摂るときも同様です。

寝たきりの時はベッドの頭部をあげて、前傾姿勢で補給介助を行いましょう。誤嚥(ごえん)性肺炎や窒息などのリスクを軽減できます。

 

2  水分の種類

水分補給では水を基本として、麦茶などのカフェインの含まない水分が好ましいです。コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインには利尿作用があり、体の中の水分が排出されやすくなります。

投薬がある方は副作用も考えられますので、カフェイン含有飲料の摂取量には注意しましょう。

冷たすぎる飲み物は胃腸への刺激が強いため、常温か40~50度に冷ました白湯がおすすめです。

 

3  嚥下(えんげ)障害がある方の水分補給

舌やのどの老化が進むと嚥下(えんげ)機能が低下してうまく飲み込めなくなり、むせることが増えます。そして最もむせやすいのが水分です。

液状の水分が摂れなくなるので、水分にトロミをつける、ゼリー状にするなど工夫して提供しましょう。

 

4 水分補給を嫌がる人への対応

声かけや介助をしても、水分を摂ることを嫌がる方もいらっしゃいます。
誤嚥(ごえん)の心配やトイレの回数が増えるのを気にしてのことかもしれません。

あるいは認知症がある場合、水分摂取を強要することで「毒や飲んでいけないものを飲ませようとしている。自分に危害が及んでしまう。」と感じる方もいるようです。

 

まずは嫌がる理由を探り、心配を解消する解決策を見つけてあげましょう。

無理やりではなく、楽しい雰囲気づくり(ティータイムなど)や、ゼリーや水分の多い果物・水分の多いおやつを提供する方法など「水分を摂りたい」を思うような働きかけがオススメです。

 

まとめ

・高齢者は脱水症になりやすいため、本人からの要求がなくてもこまめに水分補給を行う

・介護される方の状態をしっかり観察しながら、一日に2~2.5リットルの水分補給を心がける

・補給介助する時の姿勢は「前傾姿勢」で行い、状態に合わせて液状、トロミをつけたものやゼリー状にしたものを提供する

 

この記事を監修した人

磯部 直文

磯部 直文 (人事部 介護職 採用担当責任者)
京都大原記念病院グループに介護職として入職。介護老人保健施設( 入所/通所リハビリ )で現場職員として約15年間従事。グループの介護職 教育担当者を務めた後、事務職へ転身。人事部 介護職採用担当責任者として、日々、学生対応にあたる。京都市認知症介護指導者。

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